『夏季限定』


「うわ、何コレ?!ここも暑いのか・・・!?」

記録的な猛暑の中、東方に滞在していたエドは「基地内で唯一涼める場所」を求めて、
冷房が効いているはずのロイの執務室に来た。
それなのに、そこも他と変わらぬ『うだるような暑さ』である。

「・・・経費節減だよ、鋼の」
「はぁ?アンタのキャラに合ってねぇよ、それ」
「実は、今朝ハクロ将軍から提案されてね・・・・」
「・・・・相変わらず、ねちっこい愛され方されてるな?」
「モテる男は辛いよ」
そう肩を竦めて見せるロイだが、軍服はきっちりと着てるし、汗もそんなにかいている様子がない。

「暑くねぇの?大佐?」
「気合が足らんよ、鋼の」
しれっと涼しげな笑顔を見せるロイに、フンと鼻をならすと、エドは踵を返した。

「鋼の?何処に行くんだい?」
「・・・アルんとこに行って涼んでくる」
「は?」

そのまま部屋から出て行ったエドを探すと、食堂で彼を見つける。・・・
ただし、食堂の長椅子に腰掛ける弟に、べったりと抱きついている格好で。

「・・・何をしてるんだね、君たちは」
「あ、大佐。・・・僕、さっきまで食堂の冷凍室の整理手伝ってたんですけど・・・・・」
「なるほど・・・」
つまり、冷凍庫に入って冷え冷えになっている弟の体で、涼んでいるらしい。

「アル〜〜〜気持ちいいvvv大好きだ〜♪」
苦笑する弟の腕の中で、スリスリと擦り寄りながら、至福の表情でエドは微笑む。

「全く、しょうがないなぁ、兄さんは・・・・・って、大佐?!」
弟の声に顔を上げると、アルの背後から抱きしめるようにして、ロイが引っ付いている。

「ちょっ!!アンタ!!人の弟に何してるんだよ?!」
「いや、気持ち良さそうなのでね。・・・駄目かい?アルフォンス君?」
「え?・・・はぁ・・・別に構わないですけど・・・・・」
「駄目だ駄目だ!!アルはオレの!!!アンタには貸さん!!」
「ケチくさいぞ、鋼の」
「アンタは気合で何とかなるんだろ?!アルから離れろ!!」
「何事も気合だけで何とかなるなら、今ごろ私は大総統だ!!」
「っ!!この嘘つきヤロー!!やっぱりてめぇも暑いんじゃねぇか、スカしたツラしやがって〜!!」

ぎゃいぎゃいと騒がしくケンカする2人を眺めて、ロイを呼びに来たハボックは、
所在なさげにたばこをふかしながらアルに問い掛けた。

「・・・・・いつから三角関係になったんだ?しかも、アルを挟んで・・・?」
「えっと・・・・・・夏季限定・・・・・・・・かな?」

別に人で涼んでも構わないけど、ケンカするのはやめてほしいなぁ・・・・・煩いから。
そう、心の中でため息を付くアルフォンスだった。

夏の暑い日に思いついた小話。


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