ちぇーんじ♪・・・その二



「これは、面妖な・・・・・・」


もう日が落ちかけた、夕刻の学園長の庵。
腕を組み上座に座る老人、忍術学園学園長・大川は、そう唸るとしばし黙り込んだ。

「「・・・・・」」

彼の前に座した2人は、学園長の次の台詞を無言で待つ。
1人は、感情を表に表さずに。
もう一人に、不安げに瞳を揺らして。
そして、彼等に付き添ってきて、学園長の横に控える二人もどこか心配げな表情だ。

学園長の前に座る2人は秀作の姿の利吉と、利吉の姿の秀作。
横に控えるのは、伝蔵と半助である。

二人の体と意識が入れ替わってしまったのを聞いた伝蔵と半助は、学園長に報告する事を勧めた。
入れ替わってしまったのは分かったが、元に戻る方法が分からない。
それでも、元に戻る為にはなるべく二人一緒にいたほうがいいだろう、という事になった。
そうなれば秀作は学園の職員であるし、学園長に報告し、協力を願い出るべきだろう。
そして、全員で学園長に面会をし、先ほど事の経緯を説明した所だ。


報告を受けた学園長が最初に発した言葉、それが冒頭の呟きである。


伊達に年をとっている訳でなく、経験豊富なこの老人。
大概の事では驚いたりしないのだが、今回は彼もさすがに面食らった様である。
だが、2人の表情と、付き添ってきた教師達の態度を見て、疑う事は出来なかった様で、
黙り込んだまま、しげしげと2人を見比べていた。

「とにかく事情はわかった。・・・元に戻るまで、利吉もここで過ごすがいい」
「ありがとうございます」
「しかし、不思議な事もあるものだ・・・・・こんな事を見聞きするのは、わしも初めてじゃ」

奇遇ですね、私も初めてです・・・・・(涙)
利吉は、心の中でそう相槌を打つ。



「事情はわかったが・・・・・おぬしら、これからどうする?」

もちろんこれから原因を突き止め、元に戻る方法をさがすのだろうが、個々に今までの生活もある。
入れ替わったままでは色々と不都合がでて来よう?
学園長はそう続けた。

「・・・・・・」

確かに不都合だらけである。

原因も良く分からないのだから、元に戻る方法も分からない。
寝て起きたら戻っているかもしれないし、
考えたくはないが・・・・・一生このままの可能性だってある。

短い期間なら、お互いが相手の振りをしてやり過ごせばいいが、
何日も、となると・・・・
仕事、付き合い、家族・・・・・・・本当に不都合だらけだ。

利吉が答えあぐねて黙り込むと、学園長は察したように頷いた。

「お主らも、まだどうしたらよいか、わからんじゃろうな・・・」

「はい・・・・・」
「利吉、お主の次の仕事まで、猶予があるか?」
「三日ほどなら・・・・・」
「ふむ、ならば今日はもう休みなさい。混乱しているだろうし。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・夕食を食べ、ゆっくり寝て、それから考えた方が良い。」

確かに今は混乱していて、何から考えたらいいかよくわからなかった。

「・・・・・は」
「・・・・はぁい」

2人は外見にそぐわない返事をすると、その場を辞すべく立ち上がった。
廊下に出た2人に、後から学園長が声をかける。

「そう心配するな、わしには博識な友人も沢山おる。必ず道が開けよう?」

学園長の言葉に2人は一礼すると、職員長屋の方に歩いていった。



******



それを見送った学園長は、教師2人に向き直る。

「まずは、原因を突き止めねばなるまい」

その言葉に、伝蔵と半助も頷いた。

「やはり、額同士がぶつかったのが、一番の原因だとは思うのですが・・・」
「しかし、それだけでこんな事になるとは思えん。他にも何らかの要素がありそうじゃが?」
「でしょうね、とにかく一つづつ整理して、原因になりうるだろう事を特定しなくては」
「そうじゃな・・・・・伝蔵、半助。」
「「は」」
「明日の一時間目の授業は、自習。他の先生方にもそう通達を」
「は?教職員、全員ですか・・・?」
「そうじゃ、全員会議室に集まるように言ってくれ」

だんだん大事になっていきそうな事態に、伝蔵は困惑したような顔になる。
半助も、どこかウキウキとした学園長を見て、
『珍しく良識的な・・・と感心したのに、やっぱり楽しんでるんですね?!』と、肩を落とした。

「まずは、職員会議じゃ!」

学園長はそう言うと、一見好々爺のような顔で微笑んだ。

あとがき

どうしたら良いのか分からないのは、利吉と秀作だけでなく、私もです(オイ)
まぁ、とにかくえらい人に相談してみましたが・・・
別の意味でもえらい人なので、なんだか大変な事になりそうな?!(笑)
頑張れ利吉、秀作!!(まるで、人事みたいに・・・・笑)

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