「Trick or treat!」
ある日の夕方。 「・・・・・いったい何事かね?」 面食らったように呆然と呟くロイに、エドはニッと笑って見せた。 「だからぁ、『Trick or treat』!!」 「ハロウィンですよ、大佐」
唖然としているロイに、リザが答える。
「Happy Halloween・・・・・悪戯はかんべんしてもらえる?」 嬉しそうに袋を受け取る二人に、ロイはなるほど・・・と頷いた。
「・・・そうか、そんな時期だったのだな。しかし、いつの間にそんなものを用意していたのだね?中尉」
そう言うとリザは、微笑んだ。
「へへ・・・・子供っぽいかとも思ったんだけど、たまにはいいだろ?」 エドの持った、カボチャ型のバケツには、既に菓子がいっぱい詰まっていた。
「・・・皆、そんなに菓子を持ち歩いているのか・・・?」
この兄弟。・・・特にエドは男女問わず、ここの人気者だ。
『自分の言葉の効果も知らず・・・・・たちが悪いな』 そんな、呆れたようなロイの呟きを遮って、エドは手を差し出した。 「小言はいらん!!・・・ところで、くれんの?くれないの?」
悪戯の方がいいなら、それはそれでいいぜ?念入りにやってやっても。 「いや、遠慮させてもらうよ。・・・好きなだけもっていきたまえ」
ロイはデスクの一番下の引出しを、引出しごと引き抜いて上に置く。 「おお、さすが『甘味大魔王』!!いい品揃えじゃん♪じゃ、遠慮なく・・・・・」 そう言うと、エドは持っていたバケツをアルに渡すと、引出しごと手にもった。
「ちょ・・・・全部持っていくつもりか?!」
そういうと、じゃーなと手を振りながらエドはさっさと出て行った。 「引き出しは、置いていきたまえよ・・・・・」 ロイはそう呟きながら、『今日の残業は甘い物無しでこなさねばならんのか』と胸中で涙していた。
「うわっ、なんだ?!」
聞き覚えのある、腰にくる低音の声に振り向くと、そこには予想通り・・・・・大佐。
「ちょ・・・離せ!!」
そう叫ぶロイ。なんだか目が据わっている。
呆れたように、エドはため息を吐いた。
「今持ってんのって、コレ一本しかねーぜ?」
ロイはやっとエドを離し、寄越せとばかりに手を差し出す。 ニヤリと笑ったと思うと、エドはその最後の一本をパクリと咥えた。
「あ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」 もぐもぐと口を動かしながら、人の悪い笑みを浮かべるエドに、ロイはフルフルと震えて青筋を浮かべる。 「ま、もう少し待つんだな?」
意地悪にそう言ったとき、突然肩を捕まれた。
やっとそう分かったものの・・・・・ロイと唇とエドの唇の間は、一センチも離れていない。
ロイが先ほどのエドに負けないくらいの意地悪な笑みを浮かべて、踵を返して背を向けた。 「こっ・・・こんの、アホ大佐〜〜〜〜〜!!子供から菓子とって、それでも大人か〜〜〜?!」 エドの罵声に、ロイは楽しそうに笑いながら立ち去ったのだった。
「・・・・・・ったく、人の気も知らないで・・・・・・ばかやろう・・・・・」 それでも、昨日たくさんもらった菓子のどれをもらった時よりも、幸せな気分になったエドだった――――
『ほんの悪戯心でしたことだったのに・・・・・』
先ほどの『みるみる朱に染まっていった』エドの顔を思い出す。
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あとがき
デパートの食品売り場でハロウィン用のお菓子を見ながら「ああ、ハロウィンなのね」とは思っていたけれど・・・
実は、正直な所、あんまりハロウィンって良く知らなくて(^_^;)
だから特別何かするつもりはなかったんですけど、相方のハロウィンイラストをみたら、ちょっと萌えまして(笑)
『別館でもなんかするかなー』と思って、検索していろいろ見てみたら・・・・ますます萌えまして(爆笑)
2時間くらいで一気に書きました。・・・・子供の昼寝中に。(笑)
『お菓子と言ったら、『路』の甘味大魔王を出すしかない!!』・・・という訳で『路の果て・番外編』となりました。
本編がシリアスで肩凝っていたので、丁度いい息抜きになりました〜♪
少しでもあまあま気分を味わっていただけたのなら、いいのですけれど・・・・・
ではでは、本編の方も宜しくお願いしますvvv