ロイエド一年間+α・・・・『あの時、あの後』



*注意*8月のラスト後の話です。
かなり蛇足。ヘタレロイ有り。あの後にラブラブロイエドな夢を持っていた方は読まないでくださいませ!(汗)







「ああ、ここにいたのか・・・・・やっと見つけたよ、お姫様?」


廊下の隅で丸くなっている少女をやっと見つけたロイは、微笑みながら彼女に近づく。
聞こえてきたロイの声にエドはビクリと肩を揺らし、おそるおそる顔を上げた。

その表情は―――――

先ほどより赤みが引いたものの、まだほんのりと色ずく白い頬。
こちらを見上げる金の瞳は、僅かに潤んでいるようだ。
その瞳を戸惑ったように揺らしながら、いつもの威勢はどうなったのかと思うほど弱弱しい態度。
一度はこちらを見た彼女だったが、またすぐに顔を伏せてしまった。

それを見て、ロイの口元が笑いの形を作る。

彼女が自分を意識していると感じて、頬が緩むのを止められない。
『ここは一気に落とさせてもらう』
ロイは心の中でニヤリと笑いながらも、表面上はすまなそうに眉を下げて謝罪した。

「さっきは驚かせてしまって、すまなかったね」

―――無言のまま、また肩を揺らすエド。

「レディの前に出るにはふさわしくない格好だったね、配慮が足らなかったよ」

―――それでも口を開かないエドに、ロイは優しく微笑んで言った。

「驚かせてしまった詫びをしたいんだが・・・・・・今夜一緒に食事でもどうだね?」

―――その言葉に、ようやくゆるゆると顔を上げたエド。

だが、ロイの方を見てなぜか目を見開いて、そのままじっと見つめ、動かない。
そんな彼女へきっかけを与えるように、ロイは両手を広げて彼女を呼んだ。


「・・・・・おいで、エドワード?」


怖がらなくてもいい。自分の気持ちに素直になって・・・・・飛びこんでおいで?
・・・数々の美女を落としてきたフェロモン全開の微笑を向ける。
すると、彼女は固まった体をやっと少し動かし、どこかホッとした表情を浮かべて。



そして、彼女は花がほころぶように、ふわりと笑った



次の瞬間、エドは床を蹴って真っ直ぐにロイのいる方向に駆け出す。
彼女を受け止めるべく、腕を伸ばしたロイだったが・・・・・・・


スカッ


エドは、迷わずロイの横をすり抜けた。
『は・・・?』
何が起こったかわからず、そのままの姿勢で固まると、後の方で『ポスッ』と彼女を受け止める音。
慌ててロイが後を振り向くと、そこにいたのは・・・・・・

「・・・・・エドワード君?どうしたの?」
「よかったぁ、帰ってきたんだね、中尉!!」

彼女の体を受けとめたのは、ホークアイ中尉。
エドはぎゅっとリザの背中にしがみ付き、その胸に顔を埋めた。


「何があったの?」
「オレっ、オレねっ・・・・・」


泣きそうな顔で見上げるも、言葉をうまく紡げなくて口篭もるエド。
そんな彼女を見つめ、落ち着かせるように背中を撫でてやってから、リザは視線を前方の上司に向けた。
・・・・・・その瞳は怒りの色を滲ませている。

「大佐・・・・・・何をなさったんですか?」
「ちゅ、中尉!!・・・・今回は別になにもしてはいないのだが・・・・・」

リザに睨まれて、ロイは顔を引き攣らせた。
今回は本当になにもしていない。
キスどころか、触ってもいないし、口さえ碌にきいていない。
彼女の動揺の原因は『裸』であろうが・・・・・見られたのは、自分のほうである(笑)
ロイが冷や汗を垂らす中・・・・・ しばらくロイを睨みつけていたリザが、力を抜いてエドに向き直った。

「とにかく、こちらにいらっしゃい?お茶でも飲んで落ち着きましょう」
「うん・・・・・ね、中尉。しばらく一緒に居てくれる?」
「ええ、いいわよ。・・・・今日はうちに泊まりにいらっしゃい?」
「えっ!?ちょっとまちたまえ!!」

彼女はこれから私とディナーをするはずなのだ!(未定だけど)
ロイは、ぎょっとして止めようと声をあげるが、振向いてこちらを見つめたのはエドではなく、
冷気を放つ・・・・・・・・鷹の瞳。
そのまま『無言で上司を黙らせる』という荒業を披露して、リザはエドの肩を抱いたまま去っていった。



******



「兄さん、食堂で氷水もらってきた・・・・・・あれ?」


真っ赤な顔をしたまま廊下の端で丸くなっていた姉。
理由を聞いても答えず『大丈夫』と繰り返すばかり。
困ったアルはとりあえず落ち着かせるためと、やはり暑さにのぼせてしまっているのでは?という
疑念が消えないのとで、食堂に行って氷水をもらってきた。
だが、戻って見れば。
先ほど姉が丸くなっていた同じ場所にいたのは・・・・・黒髪の人。
しかも、先ほどの姉と似たようなポーズで座り、うなだれている。


「・・・大佐?どうかしたんですか?」


ロイの前に自分もしゃがみこんで聞いてみるが、反応なし。さっきの姉と同じ状態である。
・・・・・ただし、姉のように赤くなってはいないようだ。

「あの〜・・・さっきまで、兄さんがここに居た筈なんですけど、知りませんか?」
「・・・・・・・中尉が、先ほど連れていったよ」

―――今度は反応あり。ただし、『はぁ〜』という、ため息付。
なんとなく姉がらみなのを察したアルは、苦笑しつつコップを差し出した。


「よかったら飲みませんか?氷水ですけど」


差し出されたそれを見て、ロイはのろのろと首を横に振る。

「悪いが・・・できれば、温かい飲み物が欲しい」
「え!?この暑いのに、温かい物・・・・・ですか??」
「ぬくもりが欲しい・・・・・凍えそうなんだ、身も心も」
「はぁ?」

『僕には温度は感じられないから・・・良くわかんないんだけど』
アルは首を傾げつつも、立ちあがる。

「とにかく・・・わかりました!僕、熱いコーヒー入れてきますから、待っててくださいね?」
「・・・・・すまない・・・」

ロイに背を向け歩きつつ、アルはもう一度首を傾げる。
兄さんはのぼせるくらい、暑がってて?
大佐は、動けないほど凍えてて??
ああ・・・大佐の部屋だけクーラーついてるんだっけ。
―――――と、いうことは。



「冷房病かぁ!・・・・・・東方司令部の空調管理って、間違ってるよねぇ」



そんな事を考えつつ、姉にちょっかいだしてる男の為にコーヒーを取りにいく、人のいい弟であった。



8月を書いていた時、最初はここまで書いたんですが・・・
ここまで載せるとテンポが悪い気がしたし、エド視線で書いてきた本文に合わないし。
しかも、ここら辺まではまだ『かっこいいタラシなロイ』にしようと思っていたわけですよ!
(後でどうしようもなく崩れてきたので諦めましたが・・・汗)
なので、やはりここまでロイをヘタレさせてはいかん!・・・と、本文載せる時切りました。
そのまま忘れていたのですが、連載終了後エド子フォルダの中から見つけまして。
蛇足とは思ったんですが、連載終了してるからいいかなぁ?と思い、UPしてみました〜。(ホント、蛇足;)


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