”Corundum”のはづき様からの頂き物ですv

「鈍いよ、君。」



暑中見舞い申し上げます――。

暑い日が続きますが、兄さんはお元気ですか?

また准将に迷惑かけているんじゃない?いくら恋人同士だからってあんまり甘えないでね。
僕の方なら心配しないで、上手くやってるし、志望している中央の大学にも合格できそうなんだ。
そのときは中央へ寄って兄さん達の愛の巣を見に行くからあんま散らかさないでよ・・・心配だなぁ。

まぁ、手紙だし、あんまり五月蝿く言わないでおくけど、最後に一つだけ。

今暑い日々が続いているけど、兄さんのことだからリゼンブールに居たように、半裸とかで歩き回る可能性があると思うんだ。 でも、中央じゃ、被害が確実にでるから・・・准将が多分第一犠牲者になると思うけどね。 そしてきっと次には准将が犯罪者になりそうな気もする・・・ああ、僕は胃が痛いよ、兄さん。 だから、決して中央じゃ、癖だからって安易にやっちゃだめだよ・・・兄さんはその辺の自覚がないんだから・・・心配だなあ。

いい?決して冗談じゃないからね。もし、犠牲者がでたりしたら、有無を言わせず、拘束服を着せるからね!!

じゃあ、身体には気をつけて・・・それから、軍人生活はやっぱり色々と危険もあるんだから―絶対に死なないでね。


最愛の兄さんへ


アルフォンス・エルリックより。




「・・・・アルのやつ、こんな事書いてるけどよ―大丈夫だろ・・・誰も男の半裸なんぞみねぇし。」


―大事な弟からの手紙の内容を思い出しながらも、自覚がまったくないエドワードはアルフォンスが危惧していた通り、軍の施設内を半裸状態で歩いていた。 下は軍服の規定に定められたスボンをはき、上着を腰に結んでまわしている。 しかし、弟の心配も空しく、兄であるエドワードは気楽に事を考えていた。
だが―この後、エドワードは弟の忠告を素直に聞くべきだったかと後悔するはめになるだろう・・・

何しろ、これからエドワードが行くところは己の上官たるロイ・マスタング准将の元である。
―つまりは元後見人にして、エドワードの恋人へ会いに行くのだ、もっとも今は軍人としての仕事に努めているため恋人とは言いがたい状態にあるが。
それでも、ロイのほうは、仕事中であろうと、プライベートであろうと、エドワードにぞっこんで、殆どエドワード馬鹿と化していた。
そんな彼を冷たい嘲りの視線でみつつも、エドワードを哀れむ会の会員でもあるロイの部下達はやってきたエドワードを歓迎し、口を開いた―ただし、半分以上が絶叫であったが。

「よ、ただいまー書類の許可貰ってきたぞ。」
「おお、ごくろ・・・って何で半裸なんだ!!タンクトップはどうした!!」
「そんなのはなっから着ていないし。第一、暑いんだからそんなものいらねぇだろ。」
「せめて上着を羽織ってくださいっ!!」
「そうだぞ、准将がそんなところをみたら――」
「大丈夫、無能なんぞ一蹴りすればそれで済む・・・・って何時の間に来ていたんだ!!」

けらけらとハボック達の言葉を一蹴し、次から次へとわきあがる顔ぶれを眺め回した最後に見た准将の顔にうわっと悲鳴をあげる― それに不愉快さを感じたのか准将たるロイの眉間に皺が寄っていく―そして、エドワードの半裸ーつまり、上半身をじっくり見回した後再び眉間に皺を寄せたまま、話しかけた。 その様子にいつものエロさが現れなかったことに驚きながらもエドワードはロイの質問に次々と答えていく。

「・・・・・・・エドワード、君は―まさかと思うがここまでその格好で?」
「いや、さすがに電車ではできなかったからな、あっちの司令部内と、外と、えーと、ここまでの道のりと、ここだけだな。」
「――ホークアイ大尉。」
「は、すぐ様、あちらの司令部及び、通り道付近にすべて緘口令を敷かせます。」
「は?」
「まったく・・・ココまで来るのに大変だったんじゃなかったか?」
「あーハボック准尉・・・ああ、そういわれて見れば―確かに周りの視線がうざったかったな。まあ、軍服だししょうがねぇよな。」

その言葉にハボック准尉はやっぱりーと思わずにいられなかった。 何しろ、エドワードは歳を重ね、15歳のときよりも背が伸びたせいもあって、その美貌で人気を集めている。 軍の司令部でも、若い頃のロイには及ばないほどの美青年だと批評を受けているせいもあり、軍の中でも知名度は高かった。
それに加え、金色の目とさらさらとした金髪―何より、少々きつめの目つきとは裏腹に、女性に対しての礼儀が非常に良い。 それもこれも、母親と、そして師匠の教育による物だろうが、ぶっきらぼうながらも優しい態度に女性達には好評だった。
で―これが原因で、男性に恨まれているのではないか―ということだがそれもそうでもなかった―。
恨まれているといえば、エドワードの手によって事件の邪魔をされたというなんとも迷惑極まりない敵だけ。 つまり―持ち前の明るさと、人柄のよさで、着実に人気を集めている―そういっても過言ではなかった。
そして―その男性達の大半は尊敬の意で見ているのだろうが、生憎、中には無能の様に変態の目で見ている輩も居る事も否めなかった。 つまりはそういうことなのだ、アルフォンスが言いたかったのは―そういう変態が増えるだろうと危惧してのことで。

そしてそれはロイにとってもアルフォンスと共通の心配でもあった。だからこそ、ロイは緘口令を敷いたのだ。 しかもちゃかりと発火布を装着し、廊下へいそいそと消えていくではないか。

「・・・准将はどこへいくんだ?」
「あー鋼の大将は気にするな・・・廊下に虫が一杯いるんでな、駆除するだけだ。」

心なしか、ハボックの声はどっと疲れた様な―何かを諦めたような言い方で、エドワードはますますそれに訝しく首を傾げている。
つまりは―解っていないのだ、害虫というのがエドワードファンの軍人達だとは。 しかし、それもしかたがないだろう・・・エドワードはそういう一般自覚が抜けているのだ。

何しろ、ロイエドを推奨する会だの、エドワード君ファンクラブだの、そういうクラブが周りで密かに活動されているということもまったく知らないのだから。

それを考えれば、説明するべきだろうが、あんな上司では説明する気にもならない―そう思ったのだろう、ハボックは何もいわなかった。 その代わり、有能なる副官―ホークアイ大尉がにっこりと口を開く―眩いばかりの極上の笑みを向けながら。

「そうよ、ああいうことは准将にまかせておけばいいの、ところで、私と一緒にお茶でも飲みに行かないかしら?」
「え、いいの・・・仕事は?」
「もちろんよ、暑い最中、あの無能准将の変りに行かしてしまったお詫びなのだから気にしないで頂戴。 それに―私の仕事はすでに終了しましたので・・・誘ってもいいでしょうか、エルリック少佐?」
「そういう言い方は反則だって、いつもの様に呼んでくれよ・・・じゃあ、一緒に行こうかな、俺も朝だけで昼からは上がりだし。ああでも、俺が奢るよ。」
「そんな、悪いわ・・・・」
「女性に奢らせるわけにはいかねーって・・・あ、女性を同伴するとなると、上着着ないといけないな。」
「あら、それなら、タンクトップの予備があったでしょう?」
「あれ、あったっけ?」
「腐れ准将が何かあったときのためにと取っておいた物が確か・・・・あ、ありました。」
「・・・・あの腐れロイが、帰ったら殺してやる・・じゃ、着たし、行こうよ、ホークアイ大尉。」
「いやだわ、昼休みなんだから、名前で呼んで頂戴、エドワード君。」
「じゃ、リザさん、行こうか。」

その会話を見れば微笑ましいカップルのようにも見える―ああ、この場に准将がいなくてよかったと部下達一同はづくづく思ったという。 しかし、二人を快く見送ったのは昼休みというせいもあったが―彼らがすでに己の分の書類を終えているということが一番大きい。 かくして、書類をまだやり終えていない部下達は見送りを努め―この後帰ってくるであろう准将の気分を予想しあっていた。

「それにしても、・・・あのホークアイ大尉にも気に入られているってすごいですね、エドワード君は。」
「まぁ、我等が上司のお気に入りだからな―って噂をすれば・・・」
「おお、戻ってきた・・・・うわ、凄い煙っスね。」
「しょうがなかろう、大量の駆除をおこなったのだからな・・さすがに女性に対してはやめておいたが。」
「ソレは賢明っスね・・・」
「ところで―エドワードはどこへ?」
「ホークアイ大尉がさっきいそいそと休憩に連れて行きましたよ。」
「・・・・・・何だと、仕事はどうしたー?」
「二人ともすでに終っており、准将の書類待ちですよ・・・と、言っておきますが、今この場を離れたら今日残業で連れ戻されますから。」
「・・・・・・エドワード・・・」
「あ、エドワード君ですが、タンクトップはちゃんと着て行きましたのでご安心して仕事に励んで下さいね。」
「そうそう、ホークアイ大尉から書類の追加を預かっております。」
「・・・今度はホークアイ大尉対策も練るべきか・・・?」

真剣に唸ったロイに部下達全員が一斉に心の中で声を揃えて思った―それは確実に准将のほうが負けるであろうと。
そんな優しい部下達の心も知らず、結局ロイは一分間に15回はエドワードの名を呟き、二回ため息を吐きその繰り返し。
それに人工呼吸じゃあるまいし―そう突っ込んだ部下達の心などどこ吹く風でぼんやりと机に伏したまま。 つまりは結局仕事にならなかったという結論に至るのだ。

「―おい、ブレダ、今日の賭け止めておこうぜ・・・ホークアイ大尉も今日は上がりらしいしな。」
「そうだな、確実に、こりゃ残業になりそうだし・・・・おい、フュリー、仕事の終了後に鋼の大将へいつもの連絡しとけ。」
「はい・・・エドワード君もまたかって呆れますね・・・」
「ですが―これで、証明されましたな。准将の無能さも有能さもエドワード君によって左右されると。」
「そりゃ、ちがいねぇな・・・。」

げっそりと部下達はこれからの仕事の事を思いすっかり肩を落としている。 そして、改めてエドワードの偉大さをかみ締めつつ、己の仕事へと、向かい出した。



―親愛なる我が弟よ。

手紙さんきゅな、この兄はしっかり仕事しているぜ、何てたって、世間も認める鋼の錬金術師様だぜ?
そういや、今日も列車強盗があってなバルドだか何だかが、何百回目かの挑戦を申し込んできたから一蹴してやった。
あいつ年々弱くなってるぜ・・・・でもこりないあたりだけは准将にも見習って欲しいぜ。

ああそうだ、お前が言っていたことだけど、あんまり深く考えなくても良いと思うぞ・・・
別に俺はこまらねーし。あの腐った白い濁液を飲むよりずっと楽でいいぞ。
そういや、准将から伝言があったんだった。
明日にでもクーラーの新調を行い、夏のタンクトップの着用を原則として規則に盛り付けるよう申請するってお前宛に伝言。 早めにお前に伝えろって言っていたから手紙に書いておく・・・。 おれにゃ何のことだかさっぱりわかんねーけど、お前には解るって言っていたぜ。
まぁとにかくさ、そういうわけでこっちはうまくやっている― それと、あの無能に迷惑なんかかけっぱなしでいいんだよ、こっちは夜に被害を被っているんだから。 お蔭で若い腰ががっくりぎっくり腰になりそうだ・・・

ま、そういうことであいつへの気遣いは無用でいい。
またこっちに来たら連絡しろよ、先日にしっかり片付けとく。
それと、おまえこそ、大学受験失敗するんじゃねーぞ!

じゃ、元気でな!


エドワード・マスタングより



コランダムのはづき様から相互記念に頂きましたv
リクエストを聞いてくださるとのことで、私がお願いしたお題は
『軍人エドで暑い日の1コマ。もちろんロイエドv』というものでした。
その全てを盛り込んでくださり、こんな素敵な小説を書いてくださいました〜vvv
無防備なエド。
それを心配する心配性な弟。
当然のごとく嫉妬するロイ。
なんだかんだいって一人勝ちするリザ(笑)
最後にやっぱりヘタレるロイ
―――――と、見事に私の萌えポイントをついてくださったはづき様に乾杯☆
こんな素敵な物頂けて幸せです!
はづき様、本当にありがとうございました〜vvv

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