「ただいま」
「あ・・・おかえり」
居間で本を読んでいると、急に後ろから抱き寄せられた。
びっくりして振向くと、そこにいるのは当然・・・・・自分の伴侶で。
エドは読みかけの本をパタンと閉じて、彼の手をやんわり外すと、たち上がって彼に向かい合った。
「わり・・・また没頭しちゃってさ、呼び鈴聞こえなかった」
「かまわんよ・・・・・・・それ、気に入ったかい?」
男の視線の先にある本は、この男から大量にもらったプレゼントの中の一冊。
「ああ!すごく面白いぜ♪」
「やはり君はその分野に興味をそそられるようだね」
金属練成は彼が特に興味を持っている錬金術の中の一つ。
もちろんそれを知っているからプレゼントしたのだが、予想以上の喜びようにロイは満足そうに微笑む。
「・・・先日セントラル大学院のブラウン教授に君のことを話したら、是非会いたいとおっしゃっていたが?」
「え、マジ!?あの金属練成の権威の?」
「ああ、会ってみるかい?」
「会う、会いたい!!」
「なら話を通しておくよ」
「サンキュ〜ロイ!」
目を輝かせて喜ぶエドに微笑んでから、ロイは強請るような視線を向けた。
「ところで・・・・・おかえりのキスはもらえないのかな、奥様」
「誰が奥様だっ!!・・・・・ったく」
寄越された科白に少しふてくされて見せてから、それでもエドはロイの肩に手をかけると、
背伸びして、彼の唇に軽く口付けた。
毎日している事なのだが、未だ少し恥ずかしそうにする仕草が、堪らなく可愛いとロイは思う。
「ところで、飯?風呂?どっちにする?」
しかも毎日こんな風に聞いてくれる。こんな幸せが他にあるだろうか!?
・・・・・幸せに浸りつつ、ロイはエドの手を取った。
「君にする」
手の甲に口付け。
―――途端、初々しい伴侶はほわっと、可愛らしく赤くなる。
「バ、バカ!!・・・・・・・・それは、その・・・・・あ、後で」
パシンと握っていた手を叩かれる。
が、尻すぼみにごにょごにょと呟かれる科白が、また可愛い。
『・・・・・・・・・・・・・・たまらない』
こんなに幸せで、怖いくらいだ。
そんな風に思いつつも、調子にのって男はまた猫撫で声で強請る。
「じゃあ、今は膝枕で妥協する」
「・・・それだって、後にすりゃあいいだろ」
「だって疲れたんだ。・・・・・5分だけ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・ったく」
文句をいいながらも結局我侭を聞いてくれる妻は、
ソファーに座ってこちらを見上げて膝を叩いて見せる。
それに満足げに微笑みながら、ロイはゆっくりとソファーを回り込むと、
横になってその膝の上に頭を乗せた。
暖かい枕に頬を摺り寄せ、ホッと息を吐き、目を閉じる。
すると、少ししてそっと髪を撫でられる感触。――――最高に、心地良い。
『・・・・・・・・・・・・・本当に、たまらない』
この幸せの時間が待っていると思うと、どんな激務でも耐えられると、そう思う。
疲れた体が癒されていくのを感じながら、ロイは今もらった幸せな5分を満喫する。
―――彼はまたこれ以上の幸せを与えてくれるけれど
とりあえず今は・・・・・・・・・・・・・・・この5分間が、最高に幸せ。