「閣下、失礼しますよ!」

ここは大総統執務室なのにもかかわらず、咥えタバコにぞんざいな口調で入室挨拶をする男。
普通なら不敬罪に問われそうなところだが・・・彼は、これでも側近中の側近。
うるさがたの狸連中に見つからなければ、誰にもそんな態度を咎められることもない。
申し訳程度のノック後にガチャリとノブを回し入室した彼だったが、
室内に1歩足を踏み入れたまま固まったように動きを止めた。


「・・・・・・・・・・・・・・アンタ、いつから犬になったんです?」


大総統がいつも腰を下ろしている豪華な皮張りの椅子には、
さも当然と言った風情で、大型の黒い犬が偉そうに座っていた。





 拍手ログG 『大総統閣下の愛犬』・・・1 




主不在のその部屋は、今ちょっとした騒ぎになっていた。


「良い毛並みですねー。さすが大総統閣下のご愛犬ですね!」
犬好きのフュリーが、惚れ惚れしたように誉める。

「ドーベルマンですな。最初の繁殖者の名前がつけられた犬種で、軍用犬などでよく使われ、性格は利口で・・・」
博識なファルマンが犬の種類などを事細かに説明し出す。

「つーか、やっぱりこれって閣下の犬なのか?・・・うわっ!」
コレ扱いして鼻先に指を出して噛まれそうになるハボック。

「とにかくどっかに繋いでくれ〜〜〜〜〜〜!!」
犬嫌いのブレダは、大きな体を小さくして部屋の隅で振るえている。


側近達が騒ぐ中。
大総統執務室のドアがもう一度開いた。



「・・・・・何の騒ぎかしら?」
「皆、揃ってどうしたんだ?」

二人揃って入室してきたのは、リザとエド。

「あ、大佐・少将・・・実は、あの犬のことなんスけどね」
「「犬?」」

その言葉に近づいて見ると、大総統の椅子に黒い犬。

「ここにいるってことは、閣下の犬なんですかねぇ?でも・・・」

ハボックが話を続ける中、じっと犬を見つめたリザだったが
話の途中で――――――――――――おもむろに銃を取り出した。


「主人の椅子に座るとは、しつけがなってないわね」


ジャキンという安全装置を外す音に、側近達はおろか、言葉がわからないであろう犬さえも慌てる。
だが、銃声が聞こえる前にスッと影が動いた。
―――――――その影はエドワードで。
エドはロイの執務机の前に立って向かいに座る犬をしばらくじっと見つめてから、呟いた。


「・・・・・・・・・・・・・ロイ?」


犬の耳が、ピクリと動いた――――





このごろちょっと煮詰まってまして・・・気分転換にアホな物が書きたくなりました。
『公約』の番外です。
ただ、やっぱり煮詰まったままなので終われるかどうかが、疑問です・・・(だめだろ)


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