『大総統閣下の愛犬』・・・おまけ☆
次の朝―――
目覚めると同時に鼻をくすぐったのは、バラの香り。
『なんだ!?』ときょろきょろ見回して、昨日ここに泊まったのを思い出した。
隣には黒い犬―――ではなく、『人間』のロイ。
穏やかな寝息をたてて、気持ち良さそうにエドを抱きこんで眠っている。
『本当に元に戻ったんだな・・・・・』
元に戻った後も溜まりに溜まった仕事に忙殺されて、あまり感じる事が出来なかった実感を、やっと感じる事が出来た気がする。
『気持ち良さそうに寝やがって・・・・・』
手を伸ばして艶のある黒髪を撫でてやる。
『この「毛艶」は、犬の時と同じだよな』
犬の時の姿を思い出しながら、クスリと笑って。
そして、サラサラとした髪を弄んでいたエドだったが・・・突然、目を見開いた。
「あ〜〜〜〜〜!!!」
聞こえた大絶叫に、ロイは飛び起きた。
上半身を起こし周りを鋭く見回して、周囲を探る。
特に危険は見当たらず、声の主・エドの顔を覗き込んだ。
「エディ、どうしたんだ!?」
訝しげに聞くロイに、エドは焦ったように答えた。
「耳、触るの忘れてた!!」
「・・・・・は?」
「犬耳、触りたかったんだ!」
耳のケアする時に思う存分触れるはずだったのに、アンタがあの夜は拗ねたりしたからケアし損なって、触れなかったんだ!!
ああ、もう触れないと思うと悔しい〜〜〜〜!!
エドは本当に悔しそうに顔を歪めると、自分も上半身を起こして、彼の腕に両腕を絡めた。
「なぁ、また練成してみるか?」
強請るように首をかしげて見上げてくるエドを見つめて、ロイは首を竦めた。
「・・・・・・・・・・もう、こりごりだよ」
そう答えると、彼を再び布団に押し倒す。
そして、朝にはあまりふさわしくない、濃厚な口付けを贈った。
「う・・・ん」
甘い吐息を漏らすエドを見つめて、耳元に囁く。
「だって、犬だとこんな事も満足にできないからね?それはまっぴらごめんだ」
「・・・・・・アンタって、犬でも人間でもエロなのは変わんないんだな・・・」
でも、人間の方が犬臭くない分、ましか。仕方ない、犬耳は諦めるよ。
頬を上気させ、なやましい表情をしながらも・・・相変わらず憎まれ口を利く恋人は、小悪魔のようだと思う。
「是非、そうしてくれたまえ」
犬耳触りたいなら、そのうち本物の犬を贈ろう。
そう答えながら、彼の首筋に顔を埋める。
くすぐったそうに身をよじるエドを見ながら、思った。
『君はあの時「自分も犬になる」と言ってくれたけど・・・君は絶対、猫の方が似合うと思う』
いつかのミニスカ姿を思い出しながら、
『今度、猫耳と尻尾つけてくれないかなぁ♪』などと、またくだらない夢を見てしまうロイだった。
ロイ・マスタング・・・エドの言うとおり、『犬でも人間でもエロ』で、間違いないらしかった―――