「結果報告を楽しみにしていたまえ。・・・若すぎる錬金術師よ」
国家錬金術師の実技試験が終わった後、
向けた槍を目にも留まらぬ速さでなぎ払って見せた大総統は、不敵な笑みでそう言いながら踵を返した。
だが、その歩はすぐに止められ、もう一度少年の方を振り返った。
「そういえば・・・・・年若い君が、何故軍の狗になろうと思ったのだね?
確かに得るものも大きいが、リスクもまた然り・・・・・・だろうに?」
「欲しいものがあるんだよ」
「ほう?」
戯れに聞いた風な男は、少年の答えににわかに興味をもったようだった。
やり取りを見ていたロイは顔を顰めた。
『よけいなことを・・・・・・まぁ、あの子も言って良い事と悪い事位は分かるだろうが』
頭のいい少年だから、人体練成の事を自ら漏らすことなどないだろうとは思いつつ、
まだ年端の行かぬ子供なのも事実なので、ロイは緊張の面持ちで少年を見つめた。
「それはなんだね?」
「アレ。」
少年は一点を指し示し、その場にいた全員がその先を凝視した。
だが、ロイだけは目を見開き、微動だに出来なかった。
何故なら――――――その小さい指先は、真っ直ぐに自分に向けられていたからだ。
振り向いた者達も戸惑いの表情で、まじまじとロイを見つめている。
だが、黒髪の大総統だけは、面白そうに口の端を持ち上げて、少年に声をかけた。
「・・・・・マスタング大佐がほしいのかね?」
「スカウトにきたとき、一目惚れしたんだーvけど、子供じゃ相手にされないの目に見えてるし?
とりあえず同じ国家錬金術師になってからアタックしようかと」
「なるほど」
悪戯っぽく、笑う少年に。
楽しそうに頷く大総統。
ざわめく外野。
そんな中、黒髪の大佐だけは顔色を無くしていた。