「はぁ・・・結局見れなかったね。カカシ先生の素顔・・・・・」
「ほんと、何考えてんだよカカシ先生ってば・・・・・」
「・・・・・・チッ」
カカシの素顔をみよう!という計画は、あえなく失敗。
三人の教え子達は、息消沈しながら里に帰り、アカデミーの裏手の芝生に揃って座りこんでいた。
三人の前に転がる、複数のビン。
・・・もちろん酒など飲めないので、自棄酒ならぬ自棄ジュースである。
肩を落とすそんな三人に、突然声が掛けられた。
「あれ、お前ら・・・・?」
姿を現したのは、三人のアカデミー時代の担任・うみのイルカだった。
「イルカ先生!」
ナルトが、嬉しそうな声をあげる。
隣に座ると途端に擦り寄ってくるナルトの頭を撫でてやりながら、イルカは他の二人に声を掛けた。
「任務帰りか?だいぶ疲れたみたいだな」
労う様に、微笑む。
・・・だが、二人の反応は鈍い。
イルカは怪訝そうに首を傾げた。
「どうした?任務に失敗したのか、サスケ?」
「・・・・・いや」
「サクラ?」
「いえ・・・本当に、別に任務には失敗してはいないんですけどぉ」
言いよどむサクラのあとを継ぐように、ナルトががばりと顔を上げた。
「任務は完璧だってばよ!そうじゃなくて、カカシ先生の素顔のことだってば!」
俺達どうしても見たくて、先生に言ったんだ!
んで、先生みせてくれるって自分でマスクおろしたらさぁ〜〜〜〜!
・・・ストレスもあって興奮気味に話すナルトに、イルカは『ああ』と相槌を打って、笑った。
「お前らも見たのか?・・・・・あれ、ビックリするよな?」
俺、初めて見たとき、暫らく言葉も出なかったよ・・・
思い出してしみじみ言いながら、教え子達を見て―――イルカはビクリと体を後ろに引いた。
何故か三人揃ってギンギンに目を血走らせてこちらを食い入る様に見つめていたからだ。
「先生!!カカシ先生の素顔知ってるの!?」
「え、ああ・・・このごろよく二人で飲みにいくから・・・・・」
「どんな顔なんだ!?」
三人揃って詰め寄ってくる姿に、イルカは眉を寄せた。
「・・・・・・・・・・もしかして、お前達みせてもらえなかったんだな?」
途端、ピタリと揃って黙り込む。
それを見て苦笑した。どうやら、図星のようだ。
「それなら言う訳にはいかないな」
「え〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!なんで、イルカ先生のケチ!!」
「誰がケチかっ!?・・・本人が隠してるのを俺の口から教える訳にはいかんだろ?」
「あ〜〜〜もう!!なんでカカシ先生ってば、イルカ先生には見せて俺達には見せてくれないんだよっ〜!!」
尾行しても、罠を張っても、変装してもひょいひょいかわしてさ〜!
絶対、あれ全部気がついてて知らん振りしてたんだぜ?
万策尽きて正面から頼んだのに、結局誤魔化されて終わり。
ストレス、たまる〜〜〜〜〜〜〜〜!!
ギャ―ギャー騒ぐナルトに。肩を落とすサクラ。やさぐれてる、サスケ。
子供達の反応をみて、イルカはクスリと笑った。
「そっか、なら・・・お前達もっと強くなるしかないな?」
どうしても見たいなら―――――
あのカカシ先生から実力でマスクを剥ぎ取れるくらい、強くならなきゃなんないだろ?
ニッと笑って見せると、子供達はポカンとして。
―――――そして、皆一様に不敵な笑いを浮かべた。
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よーし、いつか絶対見てやろうぜ!!
そう気合を入れる子供達を、イルカは眩しそうに目を細めて見つめた。
『さすが、俺の自慢の生徒達・・・・・中々逞しくなってるじゃないか』
どんどん成長していく子供達は、まばゆい光を放っている。
ああ・・・なんか、俺もまだまだ側でそれを見ていたかったなー。
あの人はずっと見ていられるんだな・・・ちょっと、ずるいよな。
『せめてその様子ぐらいは聞かせてもらいますよ!カカシ先生!!』
いつもあっちから誘われて飲みに行くだけだったけど、今度からは俺からも誘わせていただきます!
そう心の中で呟きながらクスリと笑いを漏らすと、ナルトが顔を覗きこんできた。
「でもさ、先生は何で見せてもらえるわけ?ズルイってばよ!」
剥ぎ取ってもないのにさー。
そう愚痴るナルトの膨らんだほっぺを、指でつついて潰してやった。
「俺は飲み友達だからね、お前達とは違うの!」
お前達も、無理して剥ぎ取らなくても・・・酒の相手が出来るようになれば、見せてもらえるかもしれんな?
そう言うと、『いーや、その前にぜって―剥ぎ取る!!』と、ナルトが息巻いて。
イルカは『その意気だ、頑張れよ』と笑いながら、エールを送ってその場を後にした。