・ 素顔のあなた ・ <2>

 


受付業務を終えて、受付カウンターの上を片付けながら―――
イルカは、先ほどの子供達とのやり取りを思い出していた。

子供達の攻撃をかわし、素顔を見せなかったカカシ先生。
多分、『それも修行のうち』とでも思っているんだろう。
確かに普段からあまり顔を晒してはいないようだが、子供達が思っているほど秘密にしている訳ではないと思う。
あの人だって、外で食事をする時は外さなくてはいけないし。
実際―――俺といる時は、何の躊躇もなく外して素顔をさらしているのだ。


『まぁ、子供達があんまり一生懸命なんでからかってる・・・ってのも少々ありかな。あの人だと』


意外に子供っぽいところもあるあの人を思い出して、イルカは苦笑した。
里が誇る凄腕忍者なのに、あの人はどこか『可愛いな』と思わせる何かがあるのだ。



「やーだ、イルカ先生ったら、思い出し笑いなんかしてる!」



真面目な人だと思ったのに、本当はムッツリスケベなのー?
そんな事を言われて、ぎょっと振向くと、そこにはアスマと紅が立っていた。

「ちっ、違いますよっ!子供達と話した事思い出してただけですっ」
「あら、そうなの?てっきり、彼女のことでも思い出してたのかと思ったわ」

真っ赤になってアワアワと慌てるイルカに、『あら、真っ赤v』と、紅が笑う。
そんな二人をみながら、アスマは苦笑いしながら煙を吐き出した。

「・・・紅、あんまりからかってやるなよ」
「あら、からかってなんかないわよ?だって、イルカ先生『可愛いかったなぁ〜』って感じの表情してたんだもの」

ドキン。
女の人って、スルドイな。
イルカは内心で冷や汗をかいた。
確かに『可愛い』と思っていたところだった。
ただし、思い出していたのは『彼女』ではなく、『カカシ先生』だ。


「ねぇ、本当に彼女の事思い出してたんじゃないの〜?」


下から覗き込まれて、イルカはますます真っ赤になりながら、手をブンブンと横に振った。

「ち、違いますって!!夕方にナルト達7班の子供達と会ったんですが・・・
あいつら、カカシ先生の素顔が見たくて今日色々しかけたらしいんですけど、結局見せてもらえなくて拗ねてて。
・・・それがなんか子供らしくて可愛いなぁ〜とか、思ってたとこなんです!」

本当は、『可愛い』と思ってたのは、子供達ではなくてカカシの方だったけれど。
まさか上忍相手にそんな事を考えてたなんて不遜過ぎるので、誤魔化してしまった。
内心冷や汗を掻きながらのいい訳だったのだが、紅はそれ以上ツッコむこともなく。
俺の話に興味をそそられた様に聞き返した。

「カカシの素顔?」
「そうです。あいつらまだ見た事ないみたいで、尾行やら罠やら色々仕掛けて頑張ったらしいですよ?」

もちろん、カカシ先生に敵うわけなくて、玉砕らしいです。
そう言ってイルカは苦笑した。


「いつも隠してるから子供達も余計興味そそられるみたいで、むきになってて。
俺なんかうっかり見たことあるっていっちゃったものですから、俺まで責められて・・・」


大変でした。と、鼻の上の傷を掻くと、紅は意外そうに声をあげた。

「あら、イルカ先生は見たことあったの?」
「ええ。俺、このごろ飲みに誘っていただくんですよ」
「へぇ・・・アイツが誰か連れて飲みにいくって珍しいわね?」
「え、そうなんですか?・・・そういえば、いつもカカシ先生のなじみの店の個室ですね・・・」

やっぱりあんまり人に見られたくないのかな?
そう思いつつ首を捻る。

「ったく、相変わらずね。もったいぶっちゃって・・・」
「はは、でも少し隠しておいた方がいいと俺も思いますよ。
あんな顔で大通り歩かれたら、女の子の黄色い声が街中に響まくりそうですし?」

クスクスと笑いながら顔を上げると、瞳を見開いている二人がいた。
それに驚いて思わず身を引きながら、恐る恐る声を掛ける。


「あ、あの・・・?」
「・・・イルカ。お前には、アイツの顔、どんなふうに見えてる?」


今まで黙って紅とイルカの会話を聞いていたアスマが、急に真面目な顔で聞いてきた。






終わりませんでした・・・;続きます。


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