『困った・・・』


目の前には、先ほどまで護衛していた姫。
その姫が、目に涙を溜めてお願いポーズでこちらを見ている。

『まさかこんなオマケがついていたとは』

これから帰って、イチャパラ読みながら、ゆっくり出来るはずだったのに。
カカシは、内心で深いため息をついた―――




 ★カカ誕2008★ 『バースデープレゼント』・・・1 




今回のカカシの任務は、他国から帰郷する某姫君の護衛。
数名の部下を連れ、群がる金目当て盗賊を捻り、姫の父親である大名に敵対する人物に雇われた忍びをなぎ払い、無事に姫を大名の元に届けた。
任務完了、やれやれ・・・と思ったのは束の間。
御前を辞そうとしたカカシに、「貴方に恋をしてしまいました!」などと言いながら、瞳をうるうるにした姫が迫ってきた。

カカシはこれでも高名な忍。
若く・強く・・・顔の大半は隠していても、それとなく知れる見目の良さ。
だから、こんな事態に遭遇したのは、実は一度や二度ではないのだが・・・すべて断ってきた。
別に金は自分で使うには十二分にもらってるし、女にも不自由したことないし。
権力欲は全くないし、木の葉の里を守るという先生との約束があるから、どんなに条件が良くても他所に行く気にはならない。

・・・・・・・・もう一つ言っちゃうと、我侭な世間知らずの姫のお守を任務外にするのはまっぴら御免なのだ。

だから今回もカカシはなんの迷いもなく、速攻で断った。
とはいえ、相手はお得意様。
角を立てる訳にはいかないので、『身分違い』や『里への忠誠』などを全面に押し出して、やんわりと・・・である。
大抵はそれで、それほど拗れずに終わる。
『身分違い』は本当のことであるから、いくら姫やらお嬢やらが熱を上げても、そのおやじ達がなんとか言いくるめてつれ帰ってくれるからだ。
だが、今回限りはそう簡単にいきそうも無かった。
なぜなら・・・本当は止めるべき大名自体がノリノリだったからだ。
(どうやらヒーローに憧れるように忍に憧れを抱いていたようだ;)

『姫もだけど、こんなオヤジに好かれても嬉しくなーいよ。・・・しかし、困ったな』

ここは、やはりアレか?
そう考えて、カカシは沈痛な面持ちで姫に話しかけた。

「姫、申し訳ありません・・・・・・実は、私には将来を誓った人がいるのです」

ガ―ン!
そんな音が聞こえそうなほど、いかにも『ショックを受けました』といった表情の姫に頭を下げ、とっととずらかろうと試みる。
だが、その前にひしっと、腕を掴まれてしまった。

「姫・・・分っていだだけないでしょうか?」
「わかりません!そのお相手の方に会わせてくださいませ!」

その方が私より貴方を愛していると確認するまで、納得できませんわ!!
―――先ほどまでのたおやかな雰囲気は一変、瞳に嫉妬の焔を燃やす姫に、カカシは天を仰いだ。

『ああ・・・余計に面倒なことになっちゃった』

どうするか・・・適当にくの一呼んで、話を合わせてもらうか。
でも、アイツ等に借りを作ると、後でとんでもない事になるんだよな・・・
本気で結婚しろとか言われても困るし。
そんな面倒なことにならなくて、この姫が納得するような美人となると・・・紅とか?
後で散々酒は奢らされるだろうが、結婚を迫るような女達よりはマシだしな。
あー・・・でも、髭におこられるかなー。

『・・・どっちにしろ、わざわざ里から呼ぶのも面倒だし、この姫が里に乗りこんできたらますます面倒だし』

ああ、どうしよう。
そう思いながら、同じく護衛を担当していた木の葉の仲間達(上忍三人)を見るが、皆一斉に『我関せず』と言った感じでそっぽを向かれた。
―――――薄情なこと、この上ない。
その時、カカシの近くに影が降り立った。

「隊長、後処理はすみました。いつでも出立できます」

彼は上忍だけで編成されたこの護衛チームのサポートとして配属された中忍。
捕らえた盗賊をこの国の警務官に引き渡すなどの、戦いの後の後始末を終えてきたようだ。

「あ、ごくろーさん・・・」

そう言ってから、カカシはハタ、と気がついて、中忍の顔を見つめた。
『この人、今回チームの中では一番若いよね・・・』
自分が隊長ではあるが、他の仲間達は全員自分より年上。
しかも、そろいもそろって強面である。
だがこの中忍君は、美形とは言いがたい凡庸な顔だが、若い分可愛げがある。
顔の真中にでっかいキズがあるものの、そのキズさえなんだか愛嬌がある気がした。

―――ギリギリ、イケルか?

『背に腹はかえられない・・・コレにしとこーか』
カカシは、その中忍の手を取った。

「姫・・・そこまで仰るなら、ご紹介致します。この人が、俺の将来を誓った相手です」
「・・・・・は?」
「ええっ!?」

ポカンとする中忍に、驚く姫。
カカシは驚きのあまり呆然とする姫に見えないように片手で、忍だけが分る指文字を中忍に見せた。

『話、合わせて』

中忍も、指文字で答える。

『どうしたんです?』
『姫にせまられちゃって、困ってんのよ』
『玉の輿ですね』
『ふざけてないで、話合わせてよ』
『コレ、任務外のことですよね?』
『・・・・・足元見る気?』
『姫君を騙すなんて、気が引けるなぁ』
『・・・・・わかった。後で礼、するから』

すると、中忍は先ほどカカシが『愛嬌がある』と思った顔で、にっこりと微笑んだ。


『隊長、大船に乗った気持ちで俺におまかせください』


途端に張り切り出した中忍に、『人選を誤ったかな』と半ば後悔するカカシだった―――




我慢できずに書いてしまいました、カカ誕!
誕生日までに完結は絶対無理そうですが;サクサク進められるよう頑張ります☆


next    ナルト部屋へ