イルカは、突然近づいた気配に気がついて―――
慌てた様に立ちあがって、カカシにペコリと頭を下げた。
「すみません、お引止めしちゃって・・・俺、アカデミーでこの子達を受け持っていたうみのイルカと申します」
はたけ上忍ですよね?この子達がいつもお世話になっています。
にこりと笑いかけてくるイルカに、カカシは目を細めた。
・ 美しさは・・・ ・ ――3――
―――――笑顔も、温かい。
そう感じて・・・・・胸の奥に、何かが芽生える。
『この人・・・・・・・欲しいなぁ』
唐突に、そう思った。
少しの間の後――――
カカシはおもむろに自分の額当てに手をかけた。
「・・・初めまして」
スルリ、と額当てが外され。
黒いマスクが、スッと引き下げられる。
「はたけカカシです」
これ以上ないってほどの笑顔で、微笑んだ。
ぽかん・・・と。
口を開けてこちらを凝視するイルカに、更に近づいて。
覗き込むように、顔を近づけた。
・・・さりげなく、息をを吸い込む。
――――お日様の匂い・・・いいねぇ。
「うみのさん、どうしました?」
できるだけ甘い声で、呼ぶ。
途端、彼は真っ赤になって慌て出した。
「あっ、いやそのっ・・・・・す、すみません」
呆然とカカシの顔に見とれていた自分に気がついて、イルカはしどろもどろに謝りだした。
「し、失礼しました。初対面の方の顔凝視するなんて、失礼ですよね。
でも、はたけ上忍ってすごい男前なんですね・・・俺、なんだかビックリしちゃって」
ごにょごにょと謝りながら、チラリとこっちを見上げてまたなんだか赤くなっている。
それを見て、カカシはにっこりと笑った。
「かわい〜♪」
「・・・・は?」
「んー、こっちの話」
クスリと笑うと、首を傾げる様にしてイルカに尋ねた。
「ねぇ、俺も『イルカ先生』って呼んでいい?」
「えっ!?は、はい・・・どうぞ!って、只の『イルカ』でいいですよ、はたけ上忍」
あなたに『先生』なんてつけられるのは、どうも・・・・・
カリカリと鼻の辺りの傷を掻くイルカ。だが。
「んー、まぁそれは追々とねぇ。今はイルカ先生って呼ばせてもらいます。あ、俺のことも『カカシ』って呼んでね!はい、早速呼んでみてー?」
「は?え、えっと、じゃあ・・・・・・カカシ、先生?」
「んっ、ごーかっく☆」
ニコニコと笑うカカシに
戸惑いを隠せない、イルカ。
――――――――そして、やはり戸惑っている子供が三人。
「なぁなぁ、アレなんなんだってばよ?サクラちゃん・・・」
訳分からないながらも、押し寄せてくる不安を感じながら、ナルトがサクラに問う。
「・・・あんまり考えたくないんだけど、アレって・・・さっきカカシ先生が言ってた・・・?」
ま、まさかねぇ?
サクラは青い顔で、助けを求めるようにサスケを見上げるが。
「・・・・・・・ポリシー捨てて、落としにかかってる」
サスケに断言されて、ナルトとサクラは『ギャ〜〜〜〜〜〜!!』と、悲鳴をあげた。
******
「なーによ、君達。ウルサイよ?だめでしょ、イルカ先生とお話してるのに」
その悲鳴に、大人二人はやっと子供達を振向く。
めっ!っと、優しく怒られたのだが――――お子様達は冷や汗ダラダラだ。
だが、そんなのは目に入らぬ様に、カカシはまたすぐにイルカに向き直った。
「あ、イルカ先生!折角だからこれから飲みに行きませんかー?」
「ぎゃ〜!イルカ先生がさわられ・・・いや、間違い。さらわれる〜〜〜!!」
「いや、ナルト。・・・あながち間違ってない」
「言うな〜っ(涙)って、サスケっ、何落ち着いてんだってばよ!?イルカ先生のてーそーの危機なんだってば!!」
「ナルト・・・・・お前さっきから何言ってんだ??」
「イルカ先生、こいつらのことは気にしないでいーですよ。ね、君達ー?」
必要以上にキラキラしい笑顔でイルカに語りかけ、同時に子供達には無言の圧力で黙らせる。
そんなやり取りを見ていたサクラは、青い顔のままながら・・・呆れた様に呟いた。
「カカシ先生・・・ポリシーはどこやっちゃったのよ?」
「サクラちゃん・・さっき先生、言ったでしょ?」
『美しさは、武器!』―――――ってね?
にこりと笑うカカシに、サクラとナルトハモりながら叫んだ。
「「さっきと違―――――――う!!!」」
「ははは、ハモちゃって仲いいなぁ」
さぁ、俺達も子供達に負けずに仲良くしましょー?俺、いい店知ってるんですよ。
そうイルカを促すカカシに、子供達からはまた、悲鳴。
「ギャ―!イルカ先生が、さらわれたうえにさわられる〜!!」
「違う、ナルト・・・・・・もう、触られてる」
イルカの腰には、カカシの手。
「サスケっ、だから落ち着いて言いなおすな〜〜〜〜〜〜〜!!!」
夕暮れの空に、ナルトの絶叫がこだました。
「ふふっ」
「どうしました、カカシ先生?」
「今日は、良い日だなーって思って」
「何か良い事あったんですか?」
「ええ。休みだし、天気良いし、子供達との語らいも楽しかったしねー」
「それは、よかったですね!」
「ハイ。・・・・・そして、あなたに会えた」
「えっ・・・?」
「いつもと違う時間に墓参りにきたお陰ですね・・・・・先生に感謝しなきゃ」
「先生?」
「ええ、今は空から俺の事をみてくれているハズですから・・・・・」
なんだかね、先生に呼ばれたような気がして、休みなのに出てきたんです。
カカシは、そう言って空を見上げた―――――――