「そこ、動くんじゃねぇ!!このガキがどうなってもいいのか!?」
侵入者は3人。
ガタイの良いリーダー格の男、長身の男、小柄な男。
全員サングラスにマスクで、顔を隠している。
ガタイのいい男は左手がマシンガン内臓の機械鎧。右手にもハンドガン。
長身の男は子供を抱えて、片手に銃。
小柄な男はガタイのいい男に隠れるようにして、ナイフを手にボストンバックを抱えていた。
銃口を向けようとする警備兵に、リーダー格の男が人質の子供に銃を向けてけん制する。
「離して・・・・・!」
そう叫ぶ子供を見て、エドが顔を顰めた。
人質になっているのはあろう事か大総統の養子、セリム・ブラットレイだ。
ロイの顔も少し険しくなる。
「・・・・・どこから入り込んだんだろうな?」
「さて。警備に不手際があったんだろうな」
「あんな頭の悪そうな奴らが入れるなんて・・・・警備担当者は無能だな」
「・・・・・・・・・言っとくが、私の担当じゃないからな?」
「アンタが担当だったら離婚するところだ」
「う・・・・・・その単語を使うのはやめてくれ。無能と言われるより心臓に悪い」
声を押えて話していると、女性が走り寄ろうとして警備の者に抑えられているのが見えた。
大総統夫人である。
「セリム!!離して、セリムが!!」
「奥様、危険です!!」
「お義母様!!」
「あんたがこのガキの母親か・・・・・周りの奴らに銃を下ろすようにいいな!」
凄む犯人の言葉で、夫人は警備の者に銃を下ろすように命令する。
「・・・・・あいつら、セリムが誰だか分からないで人質にしたのか?」
「そのようだな」
「中将」
「ホークアイ少佐・・・・・状況は?」
「どうやら、犯人達は宝石強盗らしいですね。近くの宝石店から宝石を奪い逃げる途中で見つかり、
闇雲に逃げているうちに入り込んでしまったらしいです」
「やれやれ、そんな者が入り込めるほど穴があるとは・・・・・・」
「・・・・・大総統はまだ来てないのか?」
「さっきは一緒に会場入りしたんだが・・・夫人とセリム君の姿しかない所をみると、
何か急用が出来て席をはずしたんじゃないかな。大総統付きの護衛も見当たらないし。」
「んじゃ、オレがいってくっか」
エド!?ロイの慌てた声を尻目に、エドはスタスタと犯人の方に向かって歩いていく。
同じ辺り、犯人達はこそこそと仲間三人で話をしていた。
「あ、アニキ・・・・・なんでこんなに警備兵がいるんだ?!」
「しかも軍服がうじゃうじゃだな。・・・どうやらお偉方のパーティに入り込んじまったらしい」
「ええっ!!どうすんだよっ?」
「騒ぐな!!こっちには人質がいる!このまま人質連れて逃げるんだ・・・おい、お前止まれっ」
犯人に凄まれながらも、顔色一つ変えずエドワードは犯人達の近くまで進み出てから、止まった。
「エドワ・・・・・・」
思わずエドワードさんと叫びそうになるセリムに、目ばくせをする。
すると、聡い子供はわかったようで、口をつぐんだ。
「なんだ、お前!!」
「その子の兄貴だよ。弟を放してくれ」
「・・・・・・・・・・・年が離れてんな。母親にもこのガキにも似てねぇし?」
「異母兄弟だ。でも、父親は一緒だから。ほら、アレが長男」
「ああ、確かにあっちは似てるなぁ・・・・・父親が黒髪・黒目なのか」
弟分がそう呟いて見つめる先にはロイ。もんのすごく不本意な顔をしている。
だがロイが黒髪黒目なので、セリムの年の離れた三兄弟というのを犯人は納得したようだ。
「なぁ、離してやってくれ」
「まだダメだ!!逃走用の車を用意しろ!!・・・俺らが逃げ切ったら、解放してやる」
「分かった。言うとおりにするから・・・・・でも、人質は交換してくれないか?オレが一緒にいくから」
「お前が・・・・・?」
「弟はまだ小さい・・・離してやってくれ。それに、逃げる時足手まといになるだろ?
オレなら一緒に走れるし」
確かに子供を抱えて走るのは辛そうだが、大人が人質となれば逆らわれる可能性もある。
迷っていると、突然エドが上着のボタンをはずし出した。
するり、と上着が落とされて、ドレスシャツだけの上半身が現われる。
「ほら、丸腰だろ?たのむよ」
そう言って腕を広げて見せるエドに、リーダー格の男は息を呑んだ。
上着を取り去ったせいで、上半身は薄いシャツ1枚。下はぴったりとフィットしたスラックス。
体の線がはっきりと分かるそれは、武器を隠し持っていない事を示している。
・・・・・・が、それを探る為に体を見回していた犯人は、やっと気がついた。
人質交換を申し出ている青年が、とても美しい事に。
別にそういう趣味もないのに、ざわつくほどの美貌。
それに気づいて状況も忘れて見とれていると、青年は前髪をかきあげてもう一歩だけ近づいた。
「なぁ・・・・・・・オレじゃ、ダメ?」
目を細めて、誘うように微笑む。
(・・・・・・・・・・背後からなにやらマーブル模様の嫉妬のオーラを感じるが、無視した)
「よ、よよよ・・・よーし、いいだろう!」
「アニキ、なんか声が裏返ってるよ?・・・・・どもってるし」
「バ、バカヤロー、気のせいだっ」
「なぁ?そっち行っていいんだろ?いくぞ?」
「お、おいっ・・・!?―――ゆっくりだ、ゆっくりこいっ!」
エドがゆっくりと近づきセリムの所までたどり着くと、
やはり怖かったのだろう・・・・・彼はぎゅっと抱きついてきた。
その髪を撫でてやり、腰を落として視線を合わせる。
「大丈夫か?どこも痛くない?」
「はい」
「もう平気だよ、お前はお母さんのところに行くんだ」
「で、でも、エ・・・お兄様!」
「心配要らないから」
エドはそう笑って見せて、セリムの背中を大総統夫人の方に押しやる。
最初はおずおずと、段々小走りで。そして子供は母親の胸に帰った。
それを見届けてエドはまた立ち上がリ、犯人達の方を見る。
「おかしな真似はするなよ?」
心臓に当てられる、銃口。
その感触に、なんだか・・・昔弟と遭遇した列車を占拠したテロリストを思い出す。
思わず、クスリ・・・・・と笑うと、銃を当てた長身の男は不快そうに顔を歪めた。
「何、ニヤついてやがる?」
「いや、おかしな真似ってさ・・・・・」
こんなの?
言うが早いか、パンと一つ手を打って銃に掌を当てる。
パチッッと言う、練成反応の音と共に、男の銃はラッパのような物へと変貌を遂げた。
「うわあっ!?」
驚いて長身の男は手にした銃だったはずの物を捨てた。
そのみぞおちに、間髪入れず拳をめり込ませる。
途端、男はうめいて体を丸くして崩れ落ちた。
「お前っ、錬金術師か!?」
リーダー格の男が、吼えるように怒鳴って銃口を向ける。
が・・・・・・エドの蹴りの方が一瞬早く、ハンドガンは遠くに蹴り飛ばされた。
「クッ!!」
男はすかさず左手に仕込んだ機関銃を発射する。
ガガガガッと派手な音と、煙があたりを覆う。
その弾はきっと相手の体にめり込んでいる事だろう・・・・・・もう、生きてはいまい。
男はそう思いつつ、前方に目を凝らして・・・・・唖然とした。
目の前に立ちはだかる、大きな壁。
先ほどまではなかった筈の物だが――――弾は、全てそれに止められていた。
何がなんだか分からず呆然とする男の前に、壁の後から金色の影が滑り出る。
その手には、鋼の刀。
どうやら先ほどのラッパに変えられた銃から練成したようだ。
それが機械鎧に振り下ろされると、付け根のちょっと手前辺りから綺麗に切られ、
機関銃の腕はゴトンと音をさせて、床に落ちた。
「くっ・・・・・!!」
「アニキ!?・・・・こいつっ!!」
今まで影に隠れていた小柄な男が、エドに向かってナイフを振り下ろす。
それをエドは身を引いて避けるが・・・・・
避けた方向に腕を切り落とされたリーダー格の男が回り込んで待ち構えており、
エドの動きを止めるため、腕を掴まえるようと手を伸ばしてきた。
その時、パチンという音が響き――――――――
ドォン
爆発音と共に、『ぎゃっ』という悲鳴が聞こえる。
次の瞬間、リーダー格の男はあっちこっち焼け焦げた体で床に倒れこんだ。
小柄な男はそれを見て、へなへなとナイフを落としてへたり込む。
「汚い手で人の妻に触るんじゃない」
憮然とした低音が響く。
体勢を直して真っ直ぐに立ったエドは、呆れたように声の主を振り返った。
「やりすぎだよ、馬鹿」
「十分手加減だ。ちゃんと生きてる」
「・・・・・っていうか、オレまだ触られてねぇし?」
「君に触れようとしただけで、万死に価するよ」
ふんっ、と。
悪びれもせず言い放つ伴侶に、エドはため息をついた。
・・・・・まぁ、助けてもらったような形ではあるが。
コゲコゲの男を見ると・・・・・・やっぱりやり過ぎな気がする。
自分に他の男が触れるだけで強烈に嫉妬する・・・・・『夫』。
それが只のヤキモチ妬き夫なら可愛げがあるのだが、放火癖のあるヤバイ『夫』だから笑えない。
・・・・・・・・・・・っていうか、キケン人物だ。(かなり)
エドの憂いを意にも返さず、ロイは進み出てテキパキと事後処理をしだした。
それにチラッと視線を送って、エドは下がって待っていようと、壁際に向かって歩き出す。
パーティ客の拍手や賛辞に、適当に笑顔でこたえながら進み・・・・・
目的の場所にたどり着くと、壁に背を預けてその後姿を眺める。
『ああしてっと・・・・・・・・・・・・・カッコ良いんだけどなぁ』
出来る男の背中。
正直、惚れ直しそうなほどだ。
でも、一旦家に帰ると・・・・・デレデレに頬を緩めて、自分に甘えてばかりいる。
『ったく、無能なんだか有能なんだか』
エドが苦笑していると、後から声がかけられた。
「いや、全く素晴らしかったよ!!エドワード君」
興奮冷めやらぬ、といった風情で語りかけてくるのは・・・・・・先ほどのバルサ将軍。
どこかうっとりとしたような視線で見つめてくる。
「君の噂はチラホラと聞いてはいたのだが、ここまでの使い手だったとは」
「・・・・・・いえ。あの犯人達が三流だっただけですよ」
「いやいや、謙遜しないでくれ。本当にすばらしいよ・・・・・しかし、勿体無い」
「は?」
「錬金術にしろ、体術にしろ・・・これだけの腕を持っているのに、何故国家資格を返上したのだね?」
「・・・・・・・・今のオレには必要のないものですから」
「だがね、これほどの腕を家の中で腐らせておくのは勿体無すぎる!
・・・・・・もう一度軍に復帰する気はないのかな?」
『なに言ってんだ、このおっさん?』
勿体無い勿体無いと褒めちぎって、軍へと誘う将軍にエドは呆れた。
『なんか、ネジの一本でも抜け落ちたんだろうか、この人?』
人の・・・。それも、自分と同じ地位の人物の伴侶を軍へと誘ってどうするつもりなのだろう?
しかも、思いっきり自分の下について欲しいってのがありありの態度で。
もし仮に軍に入ったとしても『人のもの』。
―――――この男の下になどつくはずもないのに??
なんなんだろうと、エドが内心で首を捻っている間も、バルサは延々と口説き文句を紡ぎだしていた。
・・・・・・・・実際、バルサのネジは今、一本抜けた状態だった。
バルサは他の将軍達よりは若干若く、まだ40代。
代々将軍職に付いている名家の出身で、若い頃から将軍になる事を約束されていた男である。
豊富な財力があり、容姿もそれなりには整っている。
シルバーに近いブロンドと、深い青の瞳。腹も出ていなくて・・・・まぁ、ダンディといってもいい。
そんな彼だったから、恋愛ごとに関してがっつくという事は今までなかった。
だが―――――。
『こんなに、心惹かれる人物に出会ったことが無い・・・・・・』
そんな彼が、気分が高揚するのが抑えられずに――――――一種の興奮状態になっていた。
最初は同僚達の話を聞いてもあまり興味が湧かなかった。
自分は昔からバイだったので、美しい少年・青年など掃いて捨てるほど知っていたから。
特に、今の自分の愛人である青年は、今までの恋人の中でも最高だと満足していた。
年の頃はこの目の前にいる青年と同じ、18歳。
金髪・碧眼。スタイルだって完璧で。
性格もこちらに従順。・・・・・だが、夜になると大胆で、いつも自分を満足させてくれる。
表では、それなりに美人で家柄のいい女と家庭を持ち。
裏では、自分好みの男を囲って、楽しく時間を過ごす。
そんな風に恋愛ごとでは今最高に満足しているつもりだったから
話を聞いてもさほど興味も湧かず適当に聞き流していた。
手持ち無沙汰にふと壁際に視線を向けた時、電流が流れたかのような衝撃を受けた。
壁際に佇む人物から目が離れない――――――
人目を惹き付ける、美しい容姿。
だが、それよりも何よりも・・・・・体に纏ったオーラが『極上』だということを示していた。
誰かとさぐってみれば、人のもの。
だが興味がうせることもなく、話す機会を得ようとした時に・・・・・本来の持ち主に取り返された。
その男の能力を知っているから、威嚇の瞳に冷や汗が沸いた。
そのため一旦は引いたものの、先ほどの立ち回りを見て・・・・・・理性という名のネジが跳んだ。
馬鹿なことを言っているという自覚はあったが、止めるほどの思考能力が残っておらず、
ロイから離れた隙を見て、いそいそと近づいたバルサだった。
『なんかよくわかんねぇけど・・・・・・・・とりあえず、オレのこと欲しがってんだよな?』
めんどうだなぁ・・・と、エドは頭を掻いた。
自分の錬金術の腕を欲しがる人物は結構いる。
だが、もう自分は軍の為にそれを使う気もないし・・・ましてや軍人になるつもりなど無いのだ。
しかも、『腕』が欲しくて口説いてきていたとしても。
それをエロい方向勘違いして憤慨する、『超スーパーウルトラヤキモチ夫』がいるのだ。
アイツに見られでもしたら、勘違いして激怒するに決まってる。
・・・本当は全然ロイの勘違いなどではないのだが、相変わらず自分の魅力に少し疎いエドは、
そんなちょっとズレた考えを胸に、ため息をついた。
『このおっさんがどうなろうが知ったこっちゃないけど、オレまで酷い目に遭うんだよなぁ・・・』
過去を思い出して、顔を顰めながらも・・・・・・・・・微妙に赤くなって。
そして、次に―――――サァッっと、青くなった。(どんな目にあってるんだか・笑)
フルフルと頭を振って、それだけは避けたい!と、速攻ここから離れる決心をしてバルサを見上げた。
「折角のお言葉ですが、オレはもう軍に戻るつもりはまったくないです」
「いや、しかしっ!」
思わず肩を掴もうと腕を伸ばしたバルサだったが、スルリ・・・・・と、触れる前にかわされた。
空を掴んだままで相手を見ると、琥珀の瞳が妖艶に揺れる。
思わず息を呑むと、薄紅の唇が動き・・・・・「申し訳有りませんが」と前置きして。
「オレを口説き落とせるのも、触れることが出来るのも・・・・・この世でたった一人だけですよ」
失礼。
そう言って、エドはその場から離れてロイの元へ帰っていく。
エドが側にきたのに気づいて、ロイが腕を開く。
拒む事なく、その腕の中に自ら納まる金色をみて・・・・・・
バルサは、『あの金色を自分が手に出来る可能性は皆無なのだ』と、知った。
******
伴侶の腕の中に戻ってみると・・・・・彼が不機嫌なのに気がついた。
『さっきの将軍と話をしていた時、こちらを一度も振り向かなかったから大丈夫と思ったけど・・・・
―――――もしや、見られてた?(冷汗)』
内容が聞こえるような距離ではなかったから、何を言われたかはわかんないだろうけど・・・・・
でも、コイツ・・・・・・・・・・・・・・オレが他の男と話してるだけで妬くんだよなぁ。
内心でひやひやしつつも、機嫌を伺うように声をかけてみた。
「ロイ?」
「・・・・・・・・・・・・上着、着たまえよ」
「え?ああ!」
そういえば、丸腰を示す為に脱ぎ捨てたままだった。
差し出されたそれを身につけて、彼を見上げる。
「あのさ・・・・・・・・機嫌、悪くない?」
「君はいつも無茶しすぎだ・・・信頼してはいるが、見ている方は心配だよ」
それに・・・と、彼はむっつりと続けた。
「サービスしすぎだ」
「・・・・・は?」
「あんな小悪党に上着なんて脱いで見せて!」
「・・・・・あのなぁ」
彼の不機嫌の理由は、将軍と話をしたことじゃなくて、そこらしい。
っていうか・・・・”単に『上着』脱いだだけ”じゃないか?
脱力しつつ、そう言うと。
「あんな薄いシャツ1枚の姿を皆に披露してしまったのかと思うと、腹が立つ」
「・・・・・暖かい時期は、元々シャツ一枚でいるじゃないか?」
「人の前で『脱ぐ』ってのが、許せないんだ!」
だって、君が脱ぐ仕草って堪らなく色っぽ・・・・・・
ロイの科白はそれ以上口から出なかった・・・・・・・・・エドに、足を踏まれたからだ。
声を出さなかったのは、『中将』としてのプライドだろう。(人前だから)
ギロッと冷たい視線で睨みあげて、一応回りに気づかれないよう気を使いつつ、
小声で、でも憮然と言い放つ。
「それ以上アホなこといってっと、実家に帰るぞ」
「・・・・・・・・・・・・モウイイマセン、ゴメンナサイ」
はぁ〜と、ため息を吐きつつロイは自分も小声でそう返すと、エドの手をとりその指にキスをした。
ほどなく、遅れて到着した大総統からお呼びがかかったロイとエドは、
大総統からはお褒めの言葉を
(ついでに感謝の抱擁を受けた時は、冷や汗が湧いた・・・だが、何とかロイはもちこたえたらしい)
夫人とセリムからは感謝と賛辞の言葉を頂戴したのだった。
御前を辞してから、ロイを見上げる。
「これからどうすんの、パーティ」
「この状態だからね・・・・・・・お開きだ」
「まぁ・・・・・そうだろうなぁ。アンタは?事後処理?」
「いや、犯人は掴まっているし、後は本来の警備担当にまかせるよ」
家に帰ろう?
そう言って前髪の生え際に落ちてくるキスに、
『アンタ、人前でキスしすぎ///』と文句をいいつつ、エドはお腹の辺りを擦った。
「あーあ、まだ飯食ってないってのに」
「そうだね、どこかで食べて帰るかい?」
「んー。まだそんなに遅い時間じゃないし、適当に材料買って帰ろうぜ・・・なんか簡単な物作るから」
「じゃあ、そうしよう。私も手伝う」
「いらねー、アンタ芸術的に料理ヘタクソだから。・・・・・邪魔だし」
手伝うと言うのは口だけで、いっつもベタベタ触ってきては邪魔ばかりするロイを切り捨てながら、
エドは微妙に赤くなった顔を背けた。
・・・・・・・・・・いつもされてることを思い出したらしい。
「酷いなぁ・・・・・でも、皿をだしたり、ボウルを洗ったりするくらいは出来るぞ?」
「んじゃ、料理中はオレの半径1.5m以内に近寄らないこと!」
「はいはい」
口調は喧嘩ごしなのに、結局夫を甘やかす『妻』と
そんな妻に、どうしようもなく惚れちゃってます!みたいな『夫』。
そして『噂の夫婦』は――――ぺったりと甘い空気を纏わせて会場を出て行った。
それをこっそり見ていた軍人達は、今までの噂が事実でない事を痛感した。
『彼らは、間違いなく愛し合って結婚したのだ』
―――――――そう思い知らされた、外野だった。
その後、軍部内の 『マスタング将軍の結婚についての事実と異なる噂』 は、
綺麗に払拭されたのだった。
『麗しき金色・後編』
何とか後編で収まりました!!(無理やりっぽいけど・・・・・)
実は、本編の連載を始めた当初から、どんな風に物語が進んでいくかは未定だったのにもかかわらず、
番外はコレ!!と決めていました。
「紆余曲折を経て結婚した二人・・・・・でも、周りには結婚理由を誤解されている。
それを、久しぶりに人前に2人で出たときに、払拭する!!」みたいな話が書きたかった!!
もちろん 『美人妻』 にするつもりではいましたが、耽美って嫌いな人もいるだろうなぁ・・・と、ビビリ気味だったのですが。(苦笑)
でも、皆さんの後押しを頂いて、調子こいて思いっきり 『美人』 に出来て幸せです!!!
ありがとうございました〜〜〜〜〜〜vvv
*この作中のセリムは8〜9歳の設定です。
万年新婚夫婦が家に帰った後のお話を、おまけにどうぞv→★