”MOONTAIL”の小林桜様からの頂き物ですv

 『軍豆』・・・3



   「だからいつも言っているだろう」
   堅苦しい礼服を無造作に脱ぎ捨てながら、ロイは大げさに溜息を吐いた。
   「警戒心が無さ過ぎるのにも程がある。少しは自重してくれないとこっちの身が
  持たん」
   「何だよ、全部俺のせいかよ」
   エドワードの頬が膨らむ。
   「元はといえばあんたが女に囲まれてへらへらしてたのが悪いんじゃねーか」
   「ほう、すると君のあれは私への嫌がらせかね」
   切れ長の瞳が眇められた。
   「そんなんじゃねーよ。あのオッサンが勝手に来て、べらべら喋りだしたんだ。俺の
  せいじゃねーもん」
   ふんと肩を揺らすエドワードに、尚も言葉が続く。
   「君が隙だらけだからああいう輩が寄って来るんだ」
   「俺がいつ!」
   食ってかかろうとしたエドワードの手首と腰を同時に掴んだロイは、ほらと口許を
  歪めて笑った。
   「隙だらけじゃないか」
   「てめーが手ぇ早すぎるんだよ!」
   罵りながら鳩尾に膝蹴りを食らわせようとする乱暴な恋人を大人しくさせるには。

   「んっ…」
   深々と唇を重ね、すべてを塞ぐ。
   「ん、ん〜」
   抵抗を見せる度、舌で口腔内を深く犯して。
   思う存分蹂躙した後で顔を離すと、
   「…くそっ」
   濡れた唇が声を発した。

   「もっと艶っぽい科白は貰えないものかな」
   「エロエロ大総統」
   「何も2つも続けることは無いだろう?」
   「エロエロエロ」
   目尻を染めて拗ねたように視線だけは合わせない様子は可愛いとしか言いよう
  がない。

   「エドワード」
   名前を呼んで。
   「あまり、私に妬かせないでくれ」
   今度はこめかみや額にキスを落としながらロイは言った。
   「別に、あんなのに妬かなくたって」
   「君は綺麗で、とても目立つ」
   「全然目立たねえ―――、いや、眼に入らない程豆粒って意味じゃねえぞ!」
   「目立つよ。とても。そんな君に惹かれてどんどん悪い虫が群がってくる」
   真顔の恋人に、エドワードが返す。
   「それはあんただろ!周り中全部女で、でれでれしやがって!」
   「社交辞令だ。君こそ何だね。女性も男も見境無く引き寄せてるじゃないか」
   「知らねーよ」
   「知って貰わなければ困る」
   「おい」
   低い声を出したのはエドワードだ。
   「本気で俺が浮気するとか思ってんのか」
   「思わんよ。君は私にべた惚れだからな」
   「だっ、誰が!」
   今度は真っ赤になって彼は怒り出す。
   「て、てめーこそ俺にメロメロのくせに!」
   「ああそうだよ。だから君を連れて行きたくなかったんだ」
   「俺が居たら迷惑かよ」
   きっと、大きな瞳がロイを睨んだ。
   「心配なだけだ」
   「いつまで俺を子供扱いするんだよ!」
   悔しくてエドワードは叫んだ。

   いつになったら彼に認めて貰えるのだろう。
   その横に立てないのなら、せめて背中を。それも叶わないならせめて同じロイヤル
  ブルーをと望んだのに。

   「…子供のままだったら、こんなに妬くものか」
   だがロイは答えた。
   「君はどんどん大人になって、君の持つ輝きに誰もが気付いて惹かれていって、
  だが私は年老いていくだけで、今に誰もが君しか見なくなる」
   「何言ってんだよ…」
   エドワードが表情を歪める。
   「言ったろう。不安なんだ。君を誰かに取られないか」
   「大総統が情けないこと言ってんじゃねーよ」
   ぎゅっとしがみついてきた金髪がロイの胸に押し付けられた。

   「この国も、俺も、あんたのもんを他人に触れさせるな。ちゃんと守れ。どっちも
  あんたでなきゃダメなんだから。あんたにしか出来ないんだから」
   「エドワード…」
   背中を抱き寄せるロイの腕に任せながら彼は続けた。
   「俺だってあんなパーティとか出たくねーよ。あんたはいつも女の人と一緒で、笑って、
  優しくして」
   「エドワード」
   「でも、俺はあんたの補佐官なんだからな。いつでもあんたのそばにいて、あんたを
  守る権利があるんだから。そんな特権、俺だって誰にも譲る気ないから」
   「私もだよ」
   ポニーテールを軽く引かれて、顔を上げれば唇が降りてくる。

   何度目かのキスの後、ロイは囁いた。
   「だが、補佐官よりももっと、私のそばにいられる存在があることを、君は忘れて
  いないかね?」
   「えー、何だよそれ」
   エドワードがむっと眉を寄せた。
   「幸い今は欠員なんだが、君、なる気はあるかい」
   「あるも何も、あんたの一番近くでなきゃ意味ねえじゃん」
   補佐官以上の存在があるのなら、なるまでだ。
   「どうすりゃなれんの?」
   「簡単だよ。立候補してくれればいい」
   「じゃあする」
   あっさり答えた恋人に、ロイは笑みを堪えながら尋ねる。
   「本当にいいのかい?後でやっぱりやめるは無しだよ」
   「言わねえよ」
   「では」
   ロイが姿勢を正した。エドワードも同様に背筋を伸ばす。

   「エドワード・エルリック」
   「はい」
   「君を私のファーストレディに任命しよう」
   「………はぁ…!?」
   「はぁではない。ファーストレディだ」
   真面目な顔でロイが返す。
   「任期は私が大総統を辞するまで。その後はただのマスタング夫人となることを
  許可しよう」
   「許可ぁ?何訳分かんねえこと言ってんだ!」
   「プロポーズだよ。エドワード」
   視線を反らせまいとするかのように両手で頬を掬い上げ、大総統は囁いた。
   「愛してるよ。私のファーストレディ」
   「―――ちょっと待て〜!」



   アメストリスに金髪のファーストレディが誕生するのは、それからまもなくのこと。





あああ〜、やっぱり桜さんのところのロイは素敵です!!
カッコ良くて、スマートで、まさにできる男!理想のロイ・マスタングがここにいますよ〜vvv
そして、エドは大人になっても可愛くて、その上大人になったから色気も出て・・・ロイが妬くのも仕方ありませんね!
軍服着たエドは私にとってすごく萌え〜でv読みながら色々と想像させていただきました!
(どんな想像かって?それはとてもここでは言えませんよ・・・///・笑)
ロイが大総統でエドがファーストレディなら、きっと幸せな国が作れる事間違いなしですv
小林桜様、素敵なお話本当にありがとうございました!!

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