「と言う訳で、今日から強力な助っ人に来てもらうことになった」
「・・・・・・はぁ、”助っ人”ですか?」
犬の大総統の朝一発目のお言葉に、側近達はぐったりとした様子で気の無い返事を返した。
拍手ログG 『大総統閣下の愛犬』・・・10 
ロイが犬になって今日で三日目。
結局、ロイが犬になって以来側近達は軍部に泊まりこんで夜昼無く奔走するはめに陥っていた。
ロイを人間に戻す為に・・・以前に、ロイが抜けたせいで色々と片付けなくてはいけない雑務が溜まった上
ロイが犬の姿を駆使して集めた軍部内の情報を整理検討、対策等々やる事が山積みだったためだ。
―――だが当の元凶はそんな苦労を知ってか知らずか、高らかに宣言した。
「諸君にも心配をかけたが、ここからは本気で元に戻るための研究を始める」
だから、気持を楽にしてくれたまえ。
そう爽やかに告げる犬の大総統を見つめながら、側近達は思った。
『やっぱり今まで真面目に考えてなかったんですね・・・』
そんな心のツッコミと共に、男達はひっそりとため息をついたのだった―――――
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そしてしばらくして――――ノックと共にその”助っ人”が姿を見せる。
部屋に通された青年は、そのまま大きな執務机の前に進み出ると、ぺこりと一礼をし、
そして、なんの動揺も惑いも見せずに眼前の黒い犬を見つめると、にこやかな笑みを見せた。
「お久しぶりです、大総統閣下」
「ああ。久しぶりだねアルフォンス君」
犬の大総統の御前に進み出た青年は、アルフォンス・エルリック。
言わずもがなの、鋼の少将の弟である。
体を取り戻してからは、医学を学びたいと飛び級して大学に進み。医師免許も習得。
そして今年の春からはロイに頼まれて国家機関の研究所で錬金術の医療への応用を研究していた。
「先日は研究所の予算増額を御了承下さいまして、有難うございました。所員一同感謝しております」
「いやいや、君達の研究は国家の為に必要な事なのだ、当然だよ」
「閣下のご期待に添えるよう、これからも頑張ります」
「宜しく頼むよ。ところで今日は私事で呼びつけてすまなかったね」
「いえ、日ごろ兄共々お世話になっていますし、こんな時に少しでもご恩を返せれば嬉しいです」
「そう言ってくれると助かるよ」
ロイはそう言って手(前足)を差し出す。
アルフォンスも右手を上げ・・・そして二人はガッチリと握手を交わした――――
出入り口近くに整列して二人のやり取りと見ていた側近達だったが、
犬と青年との硬い握手の光景を見て、小声で呟く。
「・・・・・前々から思ってたけど、アルって大物だよな」
――――――――――と、ハボック。
「だな・・・でも、アルが来てくれれば助かるな。早いとこ戻してもらわんと!」
――――――――――とは、腰が引けつつも何とかこの場に踏みとどまってるブレダ。
「ですね。それにしてもあんなにしっかりと握手を交わして。頼もしいなぁ」
――――――――――感心気味のフュリー。
だが、フュリーの言葉にハボックが待ったをかける。
「いや、握手というよりは・・・」
「ああ、どちらかというと、アレは・・・」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・『お手』?
男達は心の中でのみ、そう呟いたのだった――――
(小声でも不味い事を学習したらしい・笑)