女子職員と別れてから、犬は気まずげにエドを見上げた。


「あー・・・少将、アレはその・・・」
「・・・・どうやら、浮気していたのはオレじゃなくて、 どこかのどなたか だったようですね」

向けられたのは、ホークアイ大佐に負けず劣らずの、氷の視線だった―――




 拍手ログG 『大総統閣下の愛犬』・・・9 




「ち、違うぞ!?彼女に会ったのは偶然だし、彼女にしてみれば動物を愛玩しただけであって・・・っ!」

女性は動物好きなものが多いのだなっ!
そうとは知らずに近寄ったものだから、この私が愛玩動物扱いだよ、困ったものだ。
つらつらと言い訳を並べ立ててから、
犬は小首を傾げて――――お伺いを立てるように、上目遣いでエドを見つめた。


「だからその・・・・・浮気では、全然、全くないから?」


その言葉に、エドは力を抜いたように、ふっ・・・と柔らかく笑った。

「わかってますよ、閣下」
「!!・・・わかってくれるか?」
「今の話は浮気とはいえないですよね。
・・・・・まぁ、あなたが浮気しようがどうしようが、オレには関係ありませんけど?」
「・・・っ!?」

息を呑む犬を見下ろして、一言。



「だって、オレに犬の恋人はいませんから」



ビッキーンと、瞬間冷凍されそうな視線と言葉を残して、金の少将は去っていった。
・・・・・後に残ったのは、コチコチに固まった犬が・・・一匹。



******



「あー・・・。どうやって解凍すっかなー」


エドが去った後。
ポリポリと頭を掻くハボックを・・・突然氷が溶けたように、犬が見上げた。

「(あ、自然解凍した!)・・・閣下、大丈夫で―――」
「ハボック中佐」
「ハイ?」
「散歩などしてる場合ではない!!・・・・・私は、大急ぎで元に戻るぞ」
「今ごろ焦ってきたんですか?」

だから最初からそう言ってるじゃないですか。
どうせ、少し犬のままでいて書類整理をサボろうとかそんな事考えてたんでしょ?
ったく、大物って言えば聞こえはいいけど、根拠もなしに余裕こきすぎなんスよ。
大体閣下には『人の迷惑を考える』とか、『人に気を使う』とかの感情が足りないんです・・・・・
――――ブツブツとそう文句を言う部下に・・・・・・・犬はフッと笑った(ようにみえた)。
その表情に、部下はたじっと、怯む。

「な、なんです?」
「そう言えば先ほど走っていた時、どこからか『このバカ犬!』などという言葉が聞こえてきたのだがな」
「(ゲッ、地獄耳!っていうか、犬耳だから!?)・・・・そ、そうですか。だ、誰なんでしょうねぇ?」

冷や汗をたらしつつ誤魔化す部下に―――犬は牙を剥いた。


「犬は聴覚が優れてるんだ、この馬鹿者〜〜〜〜〜〜!!」
「規格外の犬のくせに、こんなとこだけちゃんと犬能力なんて、ずるいっスよ〜〜〜〜〜〜!!」


その後、大総統府の廊下で。
黒い犬に噛まれそうになりながら、必死に逃げるハボックの姿が見られたという・・・・・・



******



中佐と犬が追いかけっこをしているあたり・・・
少将はと言うと・・・・・自分の執務室で微妙に赤い顔をしながら、口元を押えていた。



『ヤバイ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ちょっと、可愛かった』



いつもの(人間の)姿で言い訳されるとぶん殴りたくなるのに、
何で犬だとカワイク見えるんだっ!?
つーか、耳・・・・・・・・・触りたいっ!!


言い訳する犬の小首を傾げる仕草に、ちょっとときめく少将。(笑)
・・・・・・・・・・・・・・・・どうやら、結構動物好きのようであった――――





やはり、緊張感のかけらも無い。(笑)
・・・もしや、犬のほうが優しくしてもらえるかも!?ずっと犬でいるか、ロイ!?


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