「本当にここでよろしいんですか?門内までお送りいたしますよ?」


青年は、名残惜しそうにエドを見つめながらそう言った。
だが、当のエドはその視線の意味に気づかぬふうに、首を横に振る。

「いえ、民間の方が中に入るには色々と面倒な手続きがありますし。
私も門衛に用事がありますから、ここで。送って頂いてありがとうございました」


にっこりと笑って答えるエドに、男は心底残念そうに肩を落とした。




 拍手ログG 『大総統閣下の愛犬』・・・8 




「そうですか・・・それにしても、あなたとお茶をご一緒できるとは、夢のようでした」


肩を落とした男は、気をとり直してエドを見つめ、うっとりした表情で微笑む。
彼は今日の会合の出席者であり、経済界の大物の一人息子。
・・・・・以前、賊に襲われたところをエドに救われた事があり、
それ以来なにかにつけてエド宛に贈り物を届けたり、食事に誘ったりしている人物である。

「父に代理を命じられた時は、私のような若輩者が参加して良いのかと身が震えましたが、来て良かった!
・・・・・めったにお会いできないあなたにこうして会う事が出来たのですから」
「私も閣下の名代を命じられた時はどうなる事かと思いましたが、
見知ったあなたがいらしていて、とても心強かったです。
しかも、お茶までご馳走になってしまって・・・申し訳ありませんでした」
「いえ。・・・本音を言えば、是非夕食もご一緒したいところなのですが?あの、今夜のご予定は―――」

意味深な視線がエドに向けられた時、何かが二人の間に飛びこんできた。



「うわっ・・・・・!?え、犬?」



う〜〜〜っとこちらを威嚇してくるのは黒い大きな犬で、男は慌ててエドから離れた。
突然の事にポカンとしたエドだったが・・・・・・。

「閣下!?」
「え?」
「あ、いや・・・その。・・・・・この犬は大総統閣下のご愛犬で―――」
「そ、そうだったんですか!大総統閣下の・・・な、なるほどさすがに利口そうな・・・うわっ!?」

恐る恐る撫でようとしたものの、その手に噛みつかれそうになり。
どうやら犬は苦手らしい男は、別れの挨拶もそこそこに逃げるように帰っていった。



******



大総統執務室に二人と一匹の影が向かう。
ハボックはタバコをふかしながら、少将と犬は・・・・・・痴話喧嘩をしながら。(笑)

「浮気ものっ」
「送ってもらっただけでしょう?」
「お茶飲んで来たって言ってた!!」
「・・・・・(聞こえてたのか?ああ、犬の耳って・・・)だから、お茶飲んで来ただけですって。
んなことより、なに勝手に部屋出てんですか!?誰かに嗅ぎつけられたら・・・」

付き合いきれんとばかりにため息をつきつつ、軽率に外を出歩いているロイを嗜めようと話題を変えたら、
犬はショックを受けたように立ち止まった。

「・・・っ、誤魔化した!?・・・・・ま、まさかエディ!本当にあの男と浮・・・・・!?」
「〜〜〜誤魔化してなんてねぇだろ!?アンタじゃあるまいし、浮気なんてするわけがっ」
「私という者がありながら〜〜〜〜〜!!!」
「煩い、この馬鹿犬っ!大体、誰のせいで会合に出る羽目になったと・・・」

延々と続くかと思われた二人の言い合いは、突如ピタリと止まる。
二人が口をつぐんで少しした後、廊下の角から女性が現れた。
ファイルを片手にこちらを近づいてきた女性は、一礼をしてエド達の横を通り過ぎようとして――――
突如気がついたように、足を止めた。

「あらっ、さっきのワンちゃんv」
「え・・・」

エドが漏らした小さなつぶやきに気がついて、女子職員はエドを見上げた。

「あ、失礼しました。――――エルリック少将の犬ですか?」
「あ・・・いや・・・・・・その・・・」
「?・・・・・先ほど中庭であったんですけど、素敵な犬ですね・・・精悍でカッコイイし」
「カッコイイ・・・・・かな」
「ええ♪あんまりカッコイイから、私ったらつい抱き着いちゃったりしたんですけど、
怒って暴れたりする事も全然なくて・・・・・・躾がいいんですね!」

「へぇ・・・・・・・・・・・・そう」



女性の科白に、エドはにっこりと綺麗に笑う――――



その微笑に女性はほんのりと頬を染め。
犬は凍り付き。
ハボックは数歩後ろに下がったのだった――――





形成逆転?・・・つーか、みんなもう少し深刻になろーよ?犬になっちゃったんだよ!?
痴話喧嘩してる場合じゃないっしょ?(笑)
・・・・・・・まぁ、ギャグなので許してください。(多分最後まで深刻にはならな・・・苦笑)


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