「兄さん・・・ここはこうしたらいいんじゃないかな?」
「え?ああそうか!!そうすればこっちがこうで・・・・・うん、ここはこれでいいな」

さすがアル、オレの自慢の弟だけはある!!冴えてるぜv
エドはそう言うと嬉しそうにアルを抱きしめる。(というよりは身長差があるので抱き着いている)
そんなエドに、アルは苦笑しながら兄の背をポンポンと叩いた。

「はいはい。・・・・・・・そんなに誉めても何も出ないよ、兄さん?」
「オレは心の底からいってんの!!お前よりイイ男なんて世界中探したってどこにもいないんだからな!」
「兄さん・・・嬉しいけど、それ問題発言だよ?(一部の人にとっては特に。/ ため息)
それに、あんまりブラコン過ぎると皆に呆れられるよ?」
「いーんだよ、弟が好きで何が悪い!?言いたい奴には言わせとけ!」

本当に弟が可愛くて仕方ないといった様子で、最高の笑みを寄越す兄に、
弟は、やれやれといった感じながら、でも嬉しそうに見つめ返したのだった。




 拍手ログG 『大総統閣下の愛犬』・・・12 




そんな兄弟達を拗ねた様子で見つめる犬が、一匹。


「あれは、なんなのだ・・・」
「麗しい兄弟愛では?」(フュリー)
「・・・・・・・・やりすぎだとは、思わんかっ?」
「本心半分、閣下への嫌がらせ半分ってとこっスかねー?」(ハボック)
「酷い・・・酷過ぎるぞ、えでぃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!(涙)」

この場合自業自得ですって。
学習した側近は、胸の中でだけ、そう呟いた。



ロイが犬になって4日目。アルがきた次の日。
とうとう、ロイを元に戻す為の研究が本格的に始まった。

軍務で忙しい兄に代わり、アルが主体で進められることとなったのだが、
それでも、エドは何とか時間を作っては弟と合流し、熱のこもった意見の交換をしている。
今もロイの執務室のソファーにて、二人きりで(密着して)熱い議論を繰り広げていた。
――――本来なら、研究の中心にいなくてはいけない筈のロイではあったが、
今は、少し離れたところにある自分の執務机で二人の様子を見守るに甘んじている。
だがそれは本人の意思ではないようで・・・彼は不満げな声をあげた。


「なぜ、当事者の私が蚊帳の外なのだっ!?」


恋人とその弟のラブラブっぷりに大きくダメージを受けながら・・・
犬の姿なので、文字通り『吼えるように』そう叫んだロイだったが。
感じた気配に、全身の毛を逆立てて固まった。



「仕方ないのでは?―――――――閣下は今『全く』彼らの役に立たないのですから」



後ろからピッキ―ンという擬音と共に聞こえてきた科白の主は、ホークアイ大佐。
・・・相変わらずのクールビューティっぷりである。
ロイは机にめり込みそうな気分になりながらも、少々咎めるような口調で呟いた。

「き、君・・・上官に向かって、それはないだろう?
いやそれよりも――――私は傷心なんだから、もう少し優しくしてくれてもいいんじゃないのかね?」


君に愛はないのか?
恨めしそうにそう言う犬に、リザは冴え冴えとした笑みを浮かべた。


「真実をハッキリと知らしめて差し上げるのも、副官としての優しさです」

これも『愛あればこそ』ですよ、大総統閣下。
第一、閣下は錬金術が使えなくなっていらっしゃるのですから、仕方ないでしょう?
―――恨みがましい視線をばっさりと切り捨てて抑揚のない声でそう言うと、
リザは書類の確認をしだした。
ぐうの音も出ぬ犬は、それを眺めて深いため息をついた。



・・・実は、ロイは犬の姿になってしまったため、書類にサインすらできなくなってしまった。
前足ではペンも碌に持てないし
犬の視力では書類の細かなな字などは判別しずらく、書類も思うように読めない。

―――当初は『書類整理から逃れられる』かと少しは嬉しかったのだが、それほど現実は甘くない。
大総統じきじきに決済しなくてはならない書類は、やはりロイがやるしかないからだ。
仕方ないので、今はハボックが側で大総統決済の必要な書類を読み上げ、口頭でそれを処理している。
見張りつきで仕事をこなしているため、一応書類は片付いてきてはいるが、サインは無いまま。
元に戻ったら、夢に出てくるほど大量にサインさせられる羽目になるだろう。


そして、大問題がもう一つ。
どうやら、錬金術も使えなくなってしまったらしいのだ――――


ペンがもてないのだから、当然練成陣も書けないし、
既に練成陣が書いてある発火布を使って試したのだが、術は発動しなかった。
さすがに落ち込んだが、凹んでる暇も時間もない。
仕方なく研究はエドとアルにまかせることにして、
書類を読み上げさせての決済や、軍内部の不穏分子を排除するための作戦の等など、
他の仕事をしだしたロイだった。

本当は・・・ロイとしては頭脳は以前のままで記憶もあるので、
ある程度他の仕事が片付いたら、エド達の研究の手助けをするつもりでいた。
だが、当のエドに『いちいち口頭で説明するのが面倒くさい』などと言われてしまい、
早々に蚊帳の外に追い出されてしまったのだ。


「・・・・・・恋人として、あまりにも愛がたりなすぎるんじゃないだろうか?」


独り言のように呟いた言葉が聞こえたようで、恋人はこちらを不意に振向く。
そして、じろりと睨まれた。

「五月蝿いですよ、閣下。気が散るから吼えないで下さい」
「・・・・・エディ、冷たいぞ」
「今は勤務中ですので、階級でお呼びください」

取り付く島もなく切り捨てられ、ロイはため息を吐いた。



「愛に飢えて、餓死しそうだ・・・」



今度こそ小声での独り言だったのだが、やっぱり聞こえてしまったようで。
金色の少将殿は、怒りのオーラを背負いながら立ち上がった。


「〜〜〜〜〜アンタの尻拭いをやってやってんだ、十分な『愛』だろうが、この無能犬!!」


拳を振り上げるエドと、逃げの体勢に入る犬。・・・とばっちりを避けるため、下がる側近達。
そんな一発触発の中に、少しおっとりしたような声が響いた。



「兄さん、そんな風に言ったら大総統が可哀相だよ」



苦笑気味な声と共に、二人の間に立ったのは、アルフォンスだった。





相も変わらず、ドタバタ。(苦笑)
四面楚歌なあの人ですが、味方はいます。(私の『愛』です・笑)
・・・ヘタレた彼が好みと思われがちな私ですが、
本当はカッコ良くて隙の無い完全無欠なロイ・マスタングが好きです。
なので、よそ様の小説を読むときはかっこいいロイがいるサイトを探してニタニタしてます。
だからあんまりロイを貶めるのは好きじゃない・・・筈なのに、どうしてこうなってしまうのか!?
ホント、謎です。ごめんよ、ロイ・・・!!心で涙を流しながらヘタレさせています。(なら、やめろよ;)
―――――愛って、複雑だよね。


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