「あ―――――その。話せば長くなるから、要点だけかいつまんで・・・・・」
「長くなってもかまいませんから、包み隠さず全て話してください」

大総統執務室の豪華なソファーに、犬。
そして、それを取り囲む側近達。
犬の大総統は居心地が悪そうに耳をピクピクさせた後、観念したように話し始めた。




 拍手ログG 『大総統閣下の愛犬』・・・4 




「う・・・・・実は今日の昼前、日ごろ頑張っている部下達の仕事振りを見ようと、少し部屋を空けてね」
「ああ、10時にお茶をお運びしようと、ちょっとお側を離れた隙にとんずらされた時のことですね」

最初の刺は、少将。

「と、とんずらって・・・私はあくまでも部下の仕事振りを!
ま、まあそんな訳で敷地内を歩いていたら、中庭にブラックハヤテ号を見つけてね。
ハヤテ号は私の右腕のホークアイ大佐の愛犬でもあるし、ここは少々交流を深めようかと思い立ってね」
「つまりは、中庭でハヤテ号と遊んでたんスね・・・・・」

次の刺は、中佐。

「・・・・・・動物を手なずけるには、やはり餌だと思い街にでて肉屋で骨付き肉を買って」
「フュリー大尉、大総統府内外の出入チェックをもっと厳重にするよう通達を」
「はい!」

すかさず入る、少将の指示。

「・・・・・・戻ってハヤテ号に与えてみたんだが、ちっとも食べないし、遊びにものってこないし」
「誰彼かまわず餌をもらわないようしつけてありますし、閣下とは遊ばないよう言い聞かせてありますから」
「なっ!!なぜだ!?」
「サボリのネタに使われると困るからです」

三番目の刺は、大佐。

「・・・・・・そ、そうだったのか(ガックリ)・・・まぁ、そんなこんなで諦めて部屋に戻った訳だが」
「みつかって連れ戻された、の間違いだろ」

少将はだんだんイラついてきているようだ。口調が昔のそれに戻ってきている。

「・・・・・・で、午後は一生懸命に仕事に励んでいた訳だが、やはり先ほどのハヤテ号との事が気になってね。
犬の気持ちが分かればなぁ・・・と。で、犬の気持ちが分かるにはやはり同じ犬同士かな・・・なんて」



「「「自分を練成したんですかっ!?」」」



全員から、鬼気迫るツッコミ。


「いやっ!犬になろうと思った訳ではなくて、犬語だけが分かるようにだねっ!!
も、もちろん冗談だから、本当に練成しようとした訳ではなくて、ちょっと構築式組み立ててみて、
息抜きに練成陣を作成してみただけだったんだ。・・・・・・・・・・・・・・・だが」
「だが?」

更に冷たさをましたエドの声に怯みながらも、ロイは何事もないように話を続ける。
・・・・・が、耳と短い尻尾は口調とは裏腹に垂れていた。

「今日はうららかな陽気だったろう?しかも、午後はずっとデスクワークで・・・・・
息抜きに構築式なんか組み立ててみたりもしたせいか、想像以上に脳が休息を求めていたようで、ね」
「―――つまり、サボってアホな練成を組み立てて遊んでいた上に、居眠りしてたんだな・・・?」
「う・・・まぁその。つい練成陣の紙の上でうたた寝をしてしまったんだが、どういう訳か起きてみたら」
「犬になってた・・・・・・・と」
「・・・・・・・・はい」

黙り込んで、俯いてしまったエド。
それを眼の端に置きながらも、沈黙に耐えられなかったのか、犬はぺらぺらと話し出す。

「それにしても、こんな摩訶不思議な事が起こるとは、人生とはわからないものだねぇ。
まぁ、こんな難しい練成を息抜き時間に作成してしまうとは、やはり私は天才と言うべきかなぁ?
しかし、犬になってもこの美貌は隠しようもないようだ・・・見たまえ、この毛並みのよさを!」

はははは〜と、渇いた笑いを漏らしながらも、
己の愚行を誤魔化すべく、立て板に水の勢いで喋りつづける犬に―――とうとう、エドはぶちキレた。



「・・・・・・・こんのっ、大馬鹿無能大総統〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」



そう叫んだかとおもうと、エドはパンと小気味いい音をたてて、思いっきり両手を合わせた。


「地獄に落としてやる!!」


目がイッちゃってるエドに、慌ててハボックが取り縋る。

「エド、落ち着け!こんなんでも、一応大総統だからっ!殺っちゃうのはマズいって!!
た、大佐〜!!止めてください〜〜〜〜〜〜!!(泣)」

フォローになってんだかならないんだかの科白を叫びながらも、必死にエドを押える側近達。
・・・・・・・・・・・・・・・逃げる、犬。
夕日が赤く室内を照らし出した夕暮れの執務室は、色もあいまってさながら地獄絵図のよう。
―――――だが。


「少将、落ち着いてください」


落ち着いたホークアイ大佐のクールな声が響いた直後、室内の騒動はピタリと治まる。
時間が止まったかのように、そのままのポーズで止まった者達の間を縫って、リザはエドの隣に進み・・・
そして、微笑んだ。
やっと騒ぎが治まる・・・と側近達と犬が息を吐いた、その時



「少将・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・殺るなら、私も一緒に」



ジャギン!と――――静まり返った室内に響く、冷たい音。
・・・・・・・どうやら、さすがの冷静な氷の副官殿も、今回ばかりはブチギレていたようだった。





ほら、やっぱりお馬鹿な話になった(苦笑)
ろ、ロイファンの方、ごめんなさい、ごめんなさいっ><
ちゃんと愛はあるので、許してください〜〜〜〜〜〜!!


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