拍手ログD 『コトダマ』・・・U―@



「ありがとう!大佐、だ〜い好きv」



資料を目の前に差し出すと――――――
あからさまに貼り付けた笑顔で、全く心が篭ってない言葉が軽薄な音で返ってきた。
それに苦笑いを返しつつ、それでもロイは出された手に資料をのせてやった。


「なにやら、だんだんスレてきたな・・・・・・・・・・・つまらん」


”大好き”をなかなか口に出せなくて、赤くなって口ごもる君を見るのが楽しかったのに。
わざとため息混じりで返すと、してやったりといった顔でニッと子供は笑う。


「はん?いつまでもアンタを楽しませて堪るかっつーの!」


大体、あれから3年も言わせられてれば、慣れるぜ。
『ざまーみろ』と、舌を出して寄越す子供に、男は顔を顰める。

「相変らず可愛くない言い草だな。三年も『大好き』って言ってるんだから、そろそろ私に懐きたまえよ?」

いつまでたっても、エサを差し出した時にしか寄ってこない野良猫みたいだね、君は。
そういう男に、エドは心底嫌そうに顔を顰めてみせる。

「懐いて堪るか!・・・『アンタは胡散臭い』って、オレの第六感がバリバリ警報鳴らしてんだ」
「こんな良い人を捕まえて――――君の第六感は当てにならないな?」
「幾つもの命の危機を乗り越えてきた、オレ様の優秀な感覚に何を言うか!」
「・・・・・・また、無茶をしたのか」

じとり・・・・・と睨まれて、エドは言葉に詰まった。

「・・・・・その、たいしたこっちゃねーよ」
「君の『たいしたことない』ほど、あてにならないものはないね」

もごもごと言い訳するエドを切って捨てると、ロイはまた万年筆を取って書類を捲りだした。


「喧嘩っ早いのも程々にしたまえ」


君がトラブルを起すたびに、尻拭いさせられるのはこちらなのだからね?
それと・・・面倒だから、私の管轄で死ぬのも許さんぞ。

しれっと、こちらも見ずにそう言い捨てるロイに、エドは猫のように逆毛立てた。


「アンタに面倒なんかかけねーよ!嫌味大佐!!」


アンタって、本当にいけすかねぇ!!
そう怒鳴ると、エドは足を踏み鳴らしてぷりぷりと怒りながら執務室を出て行った。



******



エドが出て行ってから、ロイはクックッと背中を震わせて笑いながら、万年筆を置いた。


「やはり、あの子は怒った顔も可愛いな」


どうにも楽しくてやめられないよ。
クスクスと笑いながら、エドが聞いていればまた怒鳴り散らすだろう言葉を口にする。
大分軍部に慣れ、ロイとのやり取りにも慣れたようだったが――――やはり彼は少々短気で。
狡猾に渡り歩いている振りをしていても、ちょっとつついてやると、すぐに激高する。
今度こそやりこめてやろうと意気込んでくる彼を、最初はやられた振りをして、最後には反対にやり込める。
それが、常となっていた。


「それにしても、『いけすかねぇ』ねぇ?・・・・・随分と嫌われたものだ」


そんな言葉を投げつけられたのにも関わらず、
ロイは益々楽しそうに口角を持ち上げる。


「だが、いつまでそんなことを言っていられるかな・・・・・・鋼の?」


いけ好かないと文句を言いつつ、君は結構な時間を私の執務室で過ごしていく。
見つければ嫌な顔をするくせに、いないとその瞳は私を探す。
好きであれ、嫌いであれ・・・・・・・・・・君は、私が気になって仕方ないんだろう?

だから、そろそろ――――――――



「仕掛けてみるか」



三年経った。
いい頃合だろう?

ロイは、組んだ両手に顎をのせて、シニカルな微笑みを浮かべた。





結局続けてみることにしました、ちゃんと終れるんだろうか?(汗)
うちのロイ達の中で・・・・・・彼が、性格の悪さNo1ですかね?(笑)


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