「と、いうわけなんだ!」
「はぁ。そうなの・・・・・」
ニコニコと説明し終えた兄に、アルは一応返事を返したものの、内心かなり呆れていた。
『物に釣られ・・・いや、身長に釣られたのかぁ』
確かに、兄には有効な手だろうとは思う。
だけど・・・・・
『あの人、兄さんを手なずけて、どうするつもりなんだろう?』
その方が手駒として使いやすいからかなぁ?
それとも、また新手のからかい?
アルは首をひねりながらも、
『まぁ、とりあえず兄さんが喜んでるからいいか』
そう思いつつ、ウキウキと健康器具の説明書を読み出した兄を眺めた。
拍手ログE 『ラブラブ伸長★大作戦』 ・・・2
その後も二人の『伸長プロジェクト』は続いていた。
エドは頻繁に東方に帰るようになり、
そしてエドがイーストに帰る度に、『伸長会議(笑)』が行われ、白熱した討論が繰り広げられ―――
時にはロイの家に泊まりこみで研究をする事さえあった。
二人の関係は、以前とは見違えるくらい友好的になり、
年は離れているが親友のようにさえ、見えた。
そんな日々が数ヶ月たったある日
恒例の伸長会議を行っていた執務室で、ロイはがっくりと床に手をついた。
「鋼の、すまない・・・・・・・私が不甲斐ないばっかりにっ!!」
「顔を上げてくれよ、大佐!!アンタはよくやってくれたよ・・・・・」
うなだれるロイの傍らにエドが膝をつき、そっと肩に手を添える。
「オレ、アンタにはすごく感謝してるんだ・・・・・」
「・・・・・・・・・・・」
「だってさ、アンタすごく忙しいのに、研究は手を抜かないでやってくれてたろ?
イーストに帰る度に見せられた膨大な研究データ。必死にやってくれてたんだって、オレ嬉しかった」
エドはそう優しく声をかけたのだが、うなだれた男は顔を上げぬまま、首を横に振った。
「・・・・・でも、結果が伴わなければ、意味が無いよ」
いまだ落ち込んだままのロイの両頬にエドが手を添えて、上向かせる。
のろのろと顔を上げて、やっと目線を合わせてくれたロイに、エドは優しく微笑んだ。
「もう、いいんだ。充分だよ――――」
オレは、アンタに身長以上の大切な何かをもらった気がするよ。
そう言って、艶のあるさらさらした黒髪を撫でてやるエド。
そんなエドにロイは目を見開き、次に苦しそうに顔を歪め・・・・・そして、キッと唇をひきしめた。
「ありがとう鋼の。だが、私は諦めないよ」
「大佐・・・・・」
「所詮夢の産物なのかもしれない、無駄な努力なのかもしれない――――だが、それでも私は諦めたくない」
そうきっぱりと言って、今度こそ立ち上るロイ。
その後を追うように、エドも立ち上り姿勢を正して彼の正面に立つ。
「君は時間が経てば薬になど頼らずにも、自然と成長するだろう。
そのうち薬など要らないと思うかもしれないが・・・せめてそれまでは、私は研究を続けようと思う」
その言葉に、エドは感動の面持ちで深く頷いた。
「・・・・・・うん!オレも、手伝うよ!!」
「いや、これ以上は駄目だ」
「!?なんで・・・っ」
「君には、こんな事よりやらなくてはいけない事があるだろう?そのための旅じゃないか」
この研究は、これからは私一人でやる。
――――――――――私を信じて、任せてくれないか?
静かに、でも確固たる意思を込めてそう言うロイに、
エドは彼をじっと見つめて―――――答えを言う代わりに、そっと彼の手に触れた。
優しく握ってくる鋼の右手を、ロイの両手が包み込んで。
その上に、エドの暖かな左手が、また添えられる。
両手を握り合って、にっこりと笑いあったロイとエド。
だが、ロイの顔が不意に歪んだ。
「大佐?」
「鋼の、君は優しいな・・・・・」
「え?」
「君が、そんなに優しいから・・・・・」
「・・・・・?」
「―――――――こんな時に言うのは卑怯だと、分かっているんだがな」
苦しそうに・・・・・泣き笑いのような顔で笑うロイに、エドは目を見開いた―――――。