顔面蒼白の同僚達に気がつく事もなく―――
イルカは引っ張っていたカカシのズボンを離し・・・今度は彼の手を握った。
両手で握りこみ、ぐいぐいと引っ張る。
「ねぇ、カカシせーんせ!俺と、のみましょうよぉ」
同僚が固唾を飲んで見守る中。
カカシは片目を僅かに細め―――口布で見えないが、どうやら微笑んだようだった。
・ 酔った上でのコトですし? ・
〜〜酒は飲んでも飲まれるな!・酔っぱらいイルカ物語 <2>〜〜
宴会の席が、妙なふうにざわつき出して・・・同僚達の顔色がが更に悪くなる。
だがそのざわつきを納めたのは、絡まれた当人・カカシだった。
「火影様。俺、ここで飲みますから」
「・・・いいじゃろう。今日の宴は無礼講じゃからの」
三代目が了承すると、周りのざわめきが止まった。
同僚達はホッと安堵の息を吐くが、当のイルカは相変わらず陽気な声をあげた。
「かっかしせんせー、まずは一杯どうぞ〜〜〜」
「いただきます」
カカシはゆっくりと膝を折ってイルカの横に座る。
イルカは待ってましたとばかりにグラスを渡し、トクトクと音をさせて酌をする。
こぼしそうでハラハラしている同僚の祈りが通じたのか、ビールは何とかこぼれずにグラスいっぱいに注がれた。
『でかした、イルカ!!』
でも、次に酌する時は俺達にさせてくれ!・・・心臓がもたん(涙)
同僚達が心の中でそう呟いている中、当のイルカは『これ、うまいですよぉ』などと、カカシに焼き鳥をすすめている。
カカシがそれを受け取り・・・片手にグラス、片手に焼き鳥を持った彼にイルカは上機嫌に話しかけた。
「いや〜俺ぇ、一度カカシ先生とのみたかったんですよぉ」
「そうなんですか?・・・・それは嬉しいですね」
「一度ご挨拶させてもらいましたけどぉ、その後のあいつらの事をお聞きしたくてぇ」
「・・・ああ、なるほど。そういう意味でね」
「どーですかぁ?あいつら、しっかりやってますかぁ?」
「ええ。皆だんだん任務にも慣れて来たようですよ」
「ナルトは・・・ナルトは迷惑かけてませんか?俺、心配で心配で・・・・・アイツ、他の二人とうまくやれてますか?」
口をへの字に曲げて、鼻をぐすっっと鳴らすイルカに、カカシは優しく声をかけた。
「大丈夫ですよ。・・・サスケとやりあうことはしょっちゅうですけどね。それも、あいつら流のスキンシップっていうかね?口には出さないけれど、二人の間に絆みたいなものを感じます。もちろん、忍としての力もあがってますしね」
「本当ですか!?俺、嬉しいです〜〜〜〜〜〜!」
そんな二人のやり取りを、周りの中忍はポカンとした顔で眺めていた。
『ああ、そうか・・・そういえば、初対面じゃなかったんだっけ。・・・ナルト繋がりか』
とはいえ、挨拶程度の仲らしいが。でも、全く知らぬ間柄ではなかった。
・・・それなら、少しぐらいの無礼は許されるかもしれない。
緊張して張り詰めていた糸が緩んだように、同僚達は力を抜いた。
『そういう事なら、これを機に俺達も少し話しかけさせてもらってもいいかな・・・』
なにせ、あの写輪眼のカカシと話すなぞ、このチャンスを逃したらないかもしれない。
そんな考えまで浮かんで、笑みが戻りかけた中忍達だったが。
気を緩めたのが、間違いだった。
カカシに言われた言葉に気をよくして、ニコニコと彼を見つめていたイルカだが。
――――突然、素っ頓狂な声があげた。
「あ〜、これじゃあ飲めませんよね!すみません、気がきかなくて!!」
イルカはそう言って腕を伸ばす。
『なんの事だ?』
そう思いつつ、カカシに視線を向けた中忍達は、全員体中の体毛を総毛立てた。
――――イルカは、カカシの口布に手をかけていたのだ。
「ま、まてっ、イル・・・・!!」
必死止めようとするが、間に合わず。
イルカは、カカシの口布を一気に引き下ろした―――――