見たら殺される!!


いつも、顔を隠している写輪眼のカカシ・・・その素顔は秘密のベールに包まれている。
その徹底した隠しっぷりからすると、本人にとって最重要機密であろうと思われた。
それをこんな風に見てしまえば、何らかの報復があるやもしれない。

だから、二人の周りの中忍達は慌てて一斉に目を逸らした。

本当の事を言えば、ものすごーく興味はある。
あるのだが・・・・・命と天秤に掛ければ、もちろん命の方が重いのだ。
――――カカシの顔を視界に入れぬように中忍達が固まる中・・・場違いな、陽気な呟きが隣から聞こえてきた。

「うわぁ、すごい・・・・・俺、こんな人初めて見たぁ」

すごい・・・?
見たことないくらい・・・!?



――――――――――それって、どのぐらい?



我慢しているのに、そんな科白を聞かされた中忍達は・・・ゴクリ、と唾を呑み込みそろりと視線を上げた。




・ 酔った上でのコトですし? ・ 
〜〜酒は飲んでも飲まれるな!・酔っぱらいイルカ物語 <3>〜〜




視線を上げた中忍達は、あっけに取られたように、ぼんやりとカカシを見詰めた。


あっけにとられたのは、彼の顔を見てしまったから・・・・・・では、ない。
彼の顔が相変わらず口布に被われていたからだ。
『降ろされたんじゃなかったのか?それともすぐに元に戻した??』
中忍達は眉を寄せて、首を捻る。
だが、それはどうやら違うようだ。何故なら・・・・・。

「カカシ先生って、すごくきれーな顔、してるんですねぇ」

驚いた・・・といった感じで、マジマジとカカシの顔を見ながらイルカがそう感想を漏らしている。
綺麗だなぁ、こんな綺麗な人見たことねぇや・・・と、うっとりしたようにそう呟くイルカに、同僚達は『ああ・・・』と内心呟いた。

幻術かぁ。

だよな。普段隠しているのに、こんなにあっさり見せてくれる訳がない。
しかも、上忍が簡単に中忍に口布を剥がされるわけがない。
剥がされた・・・・・と思ったのは幻術だったのか。
それにしても、両手が塞がっていたし、印を切ったのも見えなかった―――やっぱりすごいな、写輪眼はダテじゃない。
最初はそんな風に感心していたが・・・中忍達はやがて違和感に気がついた。

違う・・・幻術にかかってるのは、イルカだけじゃなくて―――――

揃って、顔を見合わせる。
この感覚・・・幻術にかかってるのは俺達もか!?
冷や汗を垂らす同僚の隣で、イルカはまだカカシの顔を誉めている。
イルカだけ別の幻術を見せられているのか、それともイルカだけ素顔を見せてもらっているのか・・・?
判別しがたいが・・・確かめる術はなかった。
解術の印を切れば幻術にかかっているかどうかすぐに分かるが、それをやってはマズイだろう。
―――甘んじてその状況を受け入れながら、複雑な気分で酒を飲む同僚達の事など知らず、イルカはまた陽気にカカシに話かけた。

「いいなぁ!そんなに男前なら、さぞやモテるでしょうねぇ」
「・・・・・ま、それなりにね」
「一人じめはずるいですよ〜!俺もコイビト、ほしーです!誰かいい人紹介してくださいよぉ」

だんだん調子に乗って、そんな事まで言い出したイルカに、再び中忍達は慌てた。
『何を言い出すんだ、お前は!!』
ハラハラしながら上忍の顔色を覗うが・・・カカシからは剣呑な気配は感じられなかった。それどころか。

「うーん、それは無理ですよ」

などと、困ったような声であやすように優しく話し掛けている。

『さすがはたけ上忍!人間が出来ている!!』
ホッとしつつ中忍達は感動の涙を心の中で流していたが、当のイルカは不服そうに頬を膨らませた。
その上―――

「え〜〜〜〜〜〜!?・・・・・・・・ケチ。」
「い、イルカっ!!」

今度こそ顔面蒼白になって声をあげた中忍達だが、カカシは相変わらず穏やかな声色でイルカに謝った。


「ごめーんね?イルカ先生」


怒ることなく、そう言って微笑むカカシ。
ふて腐れていたイルカだったが・・・その微笑を見た途端、表情を変えた。
ポカンと食い入るようにカカシを見つめていたイルカは、しばらくして柔らかい表情になって呟いた。

「いいなぁ・・・」
「え?」
「いいなぁ、カカシ先生の彼女!彼女になった人は、いつでもこんな綺麗なカカシ先生の笑顔が見られるんですねぇ」

いいなぁ。うらやましいなぁ。俺も女だったらアタックするのに〜。
また楽しくなってきたようで、ケラケラと笑いながらクダをまくイルカに、カカシはくすりと笑って。



「そう?じゃあイルカ先生、俺と付き合ってみますか?」



悪戯っぽく笑って、そう言った。






今年も酔っぱらったままです(笑)進みがのろくてすみません;
イルカ先生だけに素顔を見せたかったので、苦肉の策で中忍達の方に幻術かけてみました(笑)


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