『『『・・・・・・・・・え?』』』

中忍達がぎょっとして、カカシを見る。
しかし、当事者であるイルカだけは、心底楽しそうに笑った。


「いーですねぇ!んじゃ、今日から恋人同士ってことで♪」


イルカは『にかっ』っと、満面の笑みを返した―――




・ 酔った上でのコトですし? ・ 
〜〜酒は飲んでも飲まれるな!・酔っぱらいイルカ物語 <4>〜〜




『馬鹿イルカ!!』


了承してどうする!?
・・・・・・いや、上忍の冗談だろうけど。それでも緊張せずにはいられない(大汗)
―――そんな友達の心配をよそに、イルカは更に大胆になる。


「んじゃ、早速ひざまくらしてくださーい!!」


オレ、恋人出来たらこーしてもらうの、夢だったんですよ〜!
そう言いながらコロリと横になり、勝手にカカシの膝の上に頭を乗せた。

「俺の膝枕なんて、寝心地悪いでしょうに?」

カカシは苦笑しながらそう言うが、イルカは首を横に振った。

「そんなことないですよぉ?俺ぇ、柔らかすぎる枕は苦手だからこんぐらいで丁度いいです!全然おっけー、むしろ最高?」

筋肉質の太ももに頬を摺り寄せ、ごくらくごくらく〜などと、悦にいっている。
すると、白くて長い指がイルカの黒髪を撫でてくれた。
―――イルカの顔が、更にへにゃりと緩む。

「イイ嫁さん、もらっちゃったな〜」
「あれ?一晩で恋人から伴侶に昇格ですか?」

・・・・・一晩と言うより、一瞬だ。
中忍達は、もはや言葉も出ない。
だが、カカシは相変わらず穏やかな顔で笑っている。
そのカカシの顔を見て、イルカは再びふにゃりと笑った。



「俺、幸せです〜〜〜〜〜」



それはそれは幸せそうに笑うイルカに、カカシは目を細め、再び彼の黒髪を梳いてやろうとしたが―――髪に伸ばした腕を突如ピタリと止め、襖の外に視線を走らせて。
・・・そして、ため息をついた。

「イルカせんせ。折角気持ち良さそうなとこ悪いけど・・・俺、行かなきゃみたい」
「行く?」
「急な任務みたいだーね。・・・ごめんね?」

カカシがそう言うと同時に、今まで中忍達が僅かに感じていた違和感が消えた。
・・・・・どうやら幻術は解かれたようだ。
カカシの顔にも、幻術ではなくちゃんと口布が当てられている。
その事に中忍達がホッとしていると、イルカが突如ガバリ起きあがった。
――――カカシは驚いたように彼を見つめて、首を傾げる。

「イルカせんせ?」
「カカシせんせぃ・・・折角結ばれたばかりなのに、俺を置いて行っちゃうんですか!?」

だーっっと、滝のような涙を流すイルカ。
そして、ガバリとカカシに抱きついた。

「行かないでください、カカシせんせぇ〜〜!俺を一人きりにしないで!!」
「イルカ先生・・・・・」

しがみついてヒンヒンと泣きじゃくるイルカの背に、カカシがそっと腕を回そうとした時・・・
急にイルカの体がカカシの腕の中から消えた。
―――ベリッ・・・と音がしそうな勢いで、イルカを引き剥がしたのは中忍達だった。


「「「すみません、はたけ上忍!!!」」」


イルカを引き離し捕まえたまま、彼等は平伏した。

「申し訳ありません!コイツには後から良く言って聞かせますので!」
「任務の邪魔をしてすみません!今のうちにどうぞ行って下さい!!」
「のちほどコイツにはお詫びに覗わせますので・・・本当に申し訳ありませんでした!!!」

カカシは何事かをいいたそうにしたが・・・
怒涛の勢いで謝る中忍達と、そして何より外のいる気配が急かしているのを感じたようで、 はぁ・・・と小さく息を吐いて、立ちあがった。

「んじゃ・・・その人、お願いするね?」
「はい!!」
「その辺に置いてかないで、ちゃんと家まで送ってあげてね?」
「了解致しました!」

そして、カカシは後ろ髪を引かれるように小さく振り返ってから、宴席を出ていった。



「はぁ・・・・・緊張した」
「ったく、イルカの馬鹿のせいで、寿命が縮んだよ」
「でも『送ってやれ』だなんて・・・ホント、はたけ上忍って人間が出来てるよな〜」

そう感心していると、気を抜いたせいで腕が緩み―――その隙に、イルカはスルリと拘束から抜け出した。
そして、すばやく廊下に出ると、カカシが消えた方向に走っていってしまう。

「ばっ、イルカ!!」

慌てて追いかけると・・・何故かイルカは途中で止まり、窓ガラスをガラリと開け放った。
イルカ横で止まり窓の外に視線を走らせると、すでに外に出ていた上忍の背中が見える。
すると、イルカは窓から身を乗り出すようにして、カカシの背中に向かって大声で叫んだ。

「カカシせんせー!!」
「!?」

振向いたカカシに、イルカは手を振った。

「オレ、今週はずーっと受付ですから!!帰ったら迎えにきてくださいねー!?」



手ぇつないで、一緒に帰りましょうね〜〜〜〜〜〜〜!!!



ブンブンと手を振るイルカに、カカシはクスリと笑って。
そして、自分も手を上げた。


「わかりましたー!」


その返事に、イルカはまたニカッっと笑った。
「いってらっしゃーい!」と再びぶんぶんと手を振ると、カカシはも「いってきます」と微笑んで。


――――そして、彼は煙と共に消えたのだった。






泣いたり笑ったり、忙しいイルカ先生です(笑)


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