『えっと、つまりコハル様が俺にバースデープレゼントをくれたってこと?』


でも・・・と、カカシは首を傾げた。

『でも、別に何も届いてないよねー?』

誕生日なんて気にも留めてなかったけど・・・そういえば、ついこの前だったよね?
俺の誕生日は9月15日だから・・・ああ、あの姫に迫られた日か。
あの日、何かもらったか・・・・・?

「なかなか有能だろう?」
「有能?」
「なにせ、ワシの秘蔵っ子じゃからなぁ」

え、物じゃなくて、人!?

「お前があっちこっち女を食い散らかしてるのは知っておる。そして、どんなに女を取り替えても本気になれんのも知っておる・・・若い内はそんな時もあるかと目を瞑っておったが、そろそろ落ちつきをもってもいいころじゃ・・・いつまでもフラフラさせておっては、お前の父母にも申し訳ないからの。だが、お前はワシに勧められたからと言って素直に受け取るような奴でもないしの?思案して、誕生日近くのお前の任務に混ぜておいたのじゃ」
「えっ!?」

誕生日近くの任務って、アレだよね。
あの時に出会った人って・・・・・

「まずは任務を一緒にこなして、有能さを分らせて一目を置かせる。そして、任務を共にし少し親しくなった後、お前の生活に入りこませる手筈だったんじゃ。なにせ、あやつはワシ自ら鍛えたからの、任務の外にも炊事・洗濯・掃除も完璧。・・・一緒にいたら手放せなくなったじゃろ?」


なにせ、あやつは何をやらせてもソツがない。


自信満々のコハルの言葉をききながら、カカシ呆然としていた。




 ★カカ誕2008★ 『バースデープレゼント』・・・7 




『あの人・・・俺のバースデープレゼントだったの?』


彼の人の姿を思い浮かべる。
なんで近づいてきたのかといぶかしんではいたが、まさかプレゼントだとは思わなかった。

『それならそうと、なんで言わないのよ』

いや、最初にそう言われたら、問答無用でたたき出してたとは思うけどさ。
そんなことをぐるぐると考えていると、コハルがまた覗きこんできた。

「で、どうなのじゃ?気に入ったか?」

気に入ったかと聞かれれば・・・・・気に入ったと言うしかない。
あの人、本当に有能で・・・何をやらせてもソツがなくて。
そして・・・・・・たまに、可愛いし。
最初は得体のしれない人だと思っていたけれど、今は一緒にいるのが心地よくなっていた。

「ま、気に入りました・・・かね」

そう言うと、コハルは満面の笑みを浮かべて、何度も頷いた。

「そうじゃろう、そうじゃろう。この婆の目に狂いはないわ」
「・・・・・してやられた気分ですね。さすがコハル様、参りました」
「ふふん、ワシも昔は他国にまで名を知られた忍、若造には負けん」

得意げにそう言うと、コハルは少し声を顰めて、意味深にカカシを見上げた。

「夜の方も、順調か?」
「は?」
「あやつは褥の術も優秀じゃ」
「ええっ!?」

褥って・・・・・!!

「あー・・・その、そっちはまだ試してません」
「なんじゃと!?手の早いお前がまだ手を出していないのか?」

コハルは驚いたものの、途中で満足そうにまた頷いた。

「それは、お前が『本気』になった証拠じゃろうよ。つまみ食いだけして捨てられたのでは困ると思っておったが・・・それも取り越し苦労だったということじゃな」

突然昔馴染みの大名の奥方に温泉に誘われてしもうて、見届けられなんだから・・・これでも気を揉んでおったんじゃ。良かった良かった。安心したわい。
コハルはそう言って笑うと、家に向かうべく踵を返す。

「ではの、カカシ。そのうち様子を見に行かせてもらうぞ?」
「ええ〜〜〜!?」
「なんじゃ、その嫌そうな顔は。・・・まぁ、いい。ところで、カカシ」
「なんです?」
「お前が本気になったのは良かったが、遠慮ばかりしておらんで、夜の努めもちゃんとするのだぞ?」
「え・・・っ」

いや、でも・・・俺、男は経験ないんだよね。
そりゃ、あの人のこと気に入ってるし、ちょっと可愛いなって思ってきたけど。
・・・・・でも、うん・・・そうだねぇ?

『あの人なら・・・男でも、アリかもね』

昨日のキスは、嫌どころか・・・なんか、ドキドキしたし。
膝枕の耳かきも気持ちよくて・・・アレ、他の男だったら、絶対気持ち悪いよね?
これって――――もしかして?



『もしかして、俺・・・いつの間にかあの人のこと、好きになっちゃってる?』



それに気がついて、にわかにドキドキしてきた。
まるで、恋も知らない若造みたい・・・って、体の経験はあっても、恋らしきものはしてこなかったから、これって初恋!?

『まいったねぇ・・・』

初恋が『宛がわれたもの』って、ちょっとカッコ悪いと思いつつも。
自分の気持ちを認めたら、ウキウキしてどうしようもなくなってきた。
―――――早く、あの人に会いたくて仕方ない。

「・・・こりゃ、カカシ!聞いておるのか!?」
「え・・・なんです?」
「ボーッとしおって。まぁいい、恋する男などこんなもんじゃ」

呆れたようにコハルは言った。

「浮かれておらんで、さっさと子づくりに励めよ?子は里の宝ぞ?」
「え!?」
「ではの」

そう言ってコハルは去っていった。
残されたカカシは、驚きの表情のまま、呆然と呟く。


「子って・・・・・」


呟いた後、厳しい表情になって、印を切った――――



******



「あ・・・カカシさん、お帰りなさい」


イルカが出迎えるのを待たずに、家の中に入る。
―――彼は、居間のソファーに座って、洗濯物を畳んでいる所だった。

「今日は早かったんですね?すみません、出迎えなくて」

にこりと笑うイルカに、カカシは無言で近づいた。

「食事はできてますけど、今日も風呂が先ですか?それなら、今パジャマを・・・」
「イルカ」

たたんだばかりの洗いたてのパジャマを持って立ち上がったイルカの前に立つ。
訝しげに見上げる彼を、ソファーの上に転がした。
―――洗濯物が、散らばる。

「なっ!?」

そのまま彼の上に圧し掛かって、手足を拘束し、抵抗を封じる。
抜け出そうとイルカはもがくが、力の差は歴然で・・・そのうち、抵抗を止めたイルカがこちらをじっと見つめた。

「カカシさん、いったい・・・・・?あっ!」

質問には答えず、彼が来ていた忍服を引き裂いた。
彼の胸が露になる。
―――平らな、男の胸が。

「アンタ・・・間違いなく、男だね?」
「・・・・・・・当たり前じゃないですか」
「抱いても、俺の子・・・産めないね?」
「は?あの、カカシさん、いったい・・・・・?」

困惑した表情で見上げるイルカを、上から見下ろす。

「つまり、コハル様が寄越したのは・・・・・・・アンタじゃない」
「!!」

目を見開いたイルカに顔を近づけ、問いかけた。


「アンタ・・・・・いったい何者なの?」


イルカの瞳が、ゆらりと揺らめいた――――




カカシはやっぱり惚れてました(笑)
次回はやっとイルカの語りが・・・(長かったぁ;)


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