聞こえた鳥の囀りに、パチリと目を開けた。

「ん・・・・・っと?」

あれ?
――――ここ、どこだ?
俺・・・・・何してたっけ?

ボケた頭のまま、目を数回瞬き。
―――目の前には、みなれた天井。

『俺の部屋・・・だな?』

おかしいな・・・俺、今まで確か外にいて―――
外?・・・・・・・・ああ、なんだ。


「夢・・・・・・か」


カカシはガリガリと頭を掻いて、上体を起こす。
すばやく身支度を整え、仕事に向うべく玄関を出る。
ドアを開けて朝日を浴びて―――眩しさに目を細めた。
その眩しい光に・・・・・さっきまで見ていた夢の中の情景が、フッと頭に浮かんだ。


―――――あの男の笑顔が、胸に広がる―――――


軽く頭を振ってそれを打ち消して、ドアを閉める。
とん、と。軽く地を蹴る。
・・・・・宙に浮いた彼の顔は、もう忍びのそれになっていた。




・ あなたを愛する夢を見た ・ ――1――




一週間後―――――

任務を終え、夜道を進む。
疲れてはいるが、報告書を出すまで任務は終わらない。
今回の任務はAランク――――相変わらず血なまぐさい仕事だった。

『まったくねぇ』

この所こんなのばっかり続いているな・・・と、ため息。
里の為の重要な任務。文句など言うつもりもないが、やはり少々疲れた。
早く報告書を出して、帰って寝よう――――家で。
そこまで思ってから、この任務に出る前に見た夢の事を思い出した。


『妙な夢みたよねぇ・・・・・』


男と二人、話をしながら歩く夢だった。
夢特有のどこかふわふわした感覚があるのに、
風の匂いまで感じられるほど、リアルでもあり・・・・・なんだか不思議な夢。

『それにしても、だれなんだろうね?あの人』

夢の中に出てきた男の事が、気になる。
夢の中だった筈なのにその姿は細部まで思い出せた。

年は多分俺と同じ位
身長は俺より少しだけ低い
きっちりと高く結い上げた髪
鼻の上に―――大きな真一文字の目立つ傷

「でも、思い出せないんだよねぇ」

こんなに細かく分かっているのに、記憶を紐解いても思い当たらない。

「まぁ・・・・・所詮夢だしね」

実在の人物ではないのかもしれないと思う。なにしろ、夢なのだから。
―――夢の中の人物など、普段ならどうでもいい事。
だが、今回はさすがに気になった。



なんてったって―――――
夢の中の自分はこともあろうに、その『男』に愛の告白のようなものをしていたのだから。



そう、ただの話しながらの散歩・・・では、その夢は終わらず。
休む為に腰掛けた大木の下で、俺はその男に『好き』だと告げたのだ。

「なんだかなー・・・・・俺、溜まってる?」

そうだとしても、男は無いだろ、男は。
・・・まぁ、よっぽど相手に色気があるってんなら、少しぐらつく事もあるかもしんないけど。
でも、夢の中の男はホント・・・普通に『男』だったし。
まぁ、忍の世界では男同士ってのも良くある事ではあるんだけど。
それでも、どうせお相手願うならやっぱり女の方がいいね、俺は。
ともかく・・・何も過酷な任務の前に男に告白する夢なんか見なくてもいいだろうに?
少々げんなりと眉を下げつつ本部の門をくぐり、受付のドアに向う。
ドアを開けながら、『でも・・・』と、心の中で呟いた。


『でもさ、なんだかすっごく幸せだったんだよねぇ』


目が覚めても、余韻でうっとりしてしまうくらい、幸せな夢だったのだ。
・・・・・やっぱ、どうかしてるよねぇ?
視線を落としたまま受付のドアを開け、ため息一つついて、受付デスクにぴらっと紙を差し出した。

「報告書デース、お願い。」
「はい、お預かり致します」

『あれ?』
今の声、どっかで聴いたような・・・・・?
顔を上げて、受付の男を見る。

初めに目に入ったのは、犬の尻尾のようにふさふさした・・・高く結い上げられた黒髪。
―――カカシの、片方しか出ていない目が見開かれる。

カリカリとペンを走らせる音が響いた後、目の前の男はやっと顔を上げた。
鼻の上に、大きな一文字の傷―――――


「はい、結構ですよ。お疲れ様でした」


にっこりと笑う顔は、まさに夢の中そのままで。
だが、これは夢じゃない。



夢の中で俺に笑いかけた男は、現実の俺の前でも同じ笑みをみせた。






まだ口調とか、正直把握しきれてないです;
おかしかったらすいません・・・・・・


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