シンデレラの夜・2

 
「これは予想以上ね・・・・・」

メイクを終えたブティックのオーナー・セシルは、感嘆のため息をついた。
彼女の目の前には、フォーマルなドレスに身を包んだ、美少女が立っている。
水色のドレスの上にシフォンの布を何枚か重ねた、華美ではないが、可憐なドレス。
機械鎧を隠すように、裾は足首まで、袖も長袖、襟元の開きも小さく、手袋もしている為、
肌の露出度は極端に少ない。
しかし、金の髪をゆるく結い上げ、服と同じ色の髪飾りで飾り、薄く化粧を施したエドの姿は・・・

まさに 『可憐な美少女』 そのものだった。

「うわぁ、兄さん!!スッゴク可愛いよ!?」
アルは、感激したように弾んだ声をあげる。

「・・・・・嬉しくねぇ・・・・・」

エドは、恨みがましい目で、アルフォンスを睨むが・・・
羞恥に頬を淡く染め、少し潤んだ目で睨まれても、怖いどころか―――

『うわっ、な、なんか心臓に悪いよ!?兄さん///』

実の兄に対して、心臓もないのにドキドキしてしまうアル(笑)
それくらい、今のエドは可愛かった。

「これなら、疑われる心配もなさそうね!」

セシルはニッコリと笑って、紅筆を置いた。
「本当に、ありがとうございます!」
アルは慌てて彼女に向き直ると、頭を下げた。
兄の方にも振り返り、礼を言うように小突く。

「・・・・どうも、ありがと・・・・」

エドは、複雑な顔ながらも、礼を言った。
「いいえ、こちらこそ、楽しかったわ♪」
「・・・・・・・(涙)」
セシルのあまりのノリノリっぷりに、
『もしや、遊ばれてるんじゃあ?』と疑っていたエドだったのだが・・・・・。
やっぱりそうだったらしいことに、心の中で涙を流した。

「あ、兄さん!もうすぐ時間だよ、急がないと!」
「やべっ、じゃあ行って来るから!!」
「うん、言葉遣い気をつけてね!あと、食事する時はお化粧取れないように気をつけて!!」
「おう!」
慌てて店を出ると、表に呼んであったタクシーに乗り込んだ。

「あんまり遅くならないうちに帰ってきなよ?ボロがでるとマズイから」
窓越しに声をかけると、エドはビッと親指を立てた。
「わかってる!じゃあ」
走り去るタクシーを見送りながら、アルは呟く。
「なんか、不安だなぁ・・・・・」
でも、今回ばかりは自分はついていくことが出来ないのだから、兄を信じるしかない。

店の中に戻ると、セシルは後片付けをしていた。
「あ、すみません、僕も手伝います!」
「あら、ありがとう。・・・・でも、アルフォンス君」
「なんですか?」
「ふと気付いたんだけど・・・このパーティ 『誕生パーティ』 ってのは名目で・・・・・・・・・
本当は 『伯爵の一人息子の嫁探し』 だって、彼にちゃんと言った?」

「あっ!!!・・・・バタバタしてて、忘れてた・・・・」
最初から言ってしまったら、絶対兄はうんと言わないと思ったので、
出掛けにさらっと言うつもりだったのだ。

「セシルさん、どうしよう・・・・・?」

不安げに、そう言うアルをセシルは慰める。
「そんなに心配しなくても大丈夫よ。名門の伯爵家だから・・・・・・・・
それこそ何十人も候補が来てるはずだし!」
「そ、そうですよね?そんなに若くて綺麗な人が集まっている中で、
男である兄さんが見初められるなんてこと、あるわけがないですよね?」
「そ、そうよ、もちろん!!たとえ、どんなに可愛くったって・・・・」
そこまで言ってから、2人はさっきのエドの美少女っぷりを思い出して、黙り込んだ。

『不安だ』 わ』

2人の沈黙はしばらく続いた。

『シンデレラの夜・2』



魔法使いのお姉さん登場!(笑)・・・とうとうオリキャラ出ちゃったよ・・・
ハガレンの世界に『貴族』なんて者がいるのでしょうか?まぁ、いることにしといてください(苦笑)
微妙にアルエド?!
いえ、うちのはただの・・・・・以下同文(笑)



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