シンデレラの夜・3

 
パーティ会場である大広間で、エドワードは不機嫌そうにジュースを飲んでいた。
その周りを、若い男達が取り囲んでいる。

『なんで、こんなことに・・・・・』

エドの口からは、知らず知らずのうちにため息が洩れていた



「うっわー、すげえ屋敷!」

屋敷の前でタクシーを降りたエドは、おもわず感嘆の声を上げた。
さすがに名家に相応しい造りの、歴史を感じるような大きな屋敷だ。
庭の広さだけでも半端ではない。
自分の環境とは、まさに 『別世界』 といった感じだ。
言った後で、女装中だったのを思い出し、慌てて口をつぐんで辺りを見回す。
だが、近くには人がおらず、離れた所に居る人には聞こえなかったらしい。
ホッと胸をなでおろし、エドは屋敷の中に入っていった。

緊張しながら受付をしたエドだったが、拍子抜けするぐらいあっさり通された。
ばれなくて良かったのだが、内心ちょっと複雑である。

「そんなに濃い化粧したわけでもないのに・・・・オレってそんなに女くさいのか?!」

『かっこいい男』 を目指しているエドは、少々ヘコミながら会場に入ると・・・・
女ばかりだと思いきや、招待客らしい男の客も沢山いた。
伯爵の客らしい紳士淑女の他にも、若い男達まで沢山いる。
どうやら伯爵の息子の友達らしいが・・・上流階級の優男ばかりである。
いや、それだけなら別にかまわないのだが・・・

問題は、会場に付くなり、その男どもが自分を取り囲みだしたということである。

「どちらから、いらしたんですか?」
「何かお飲み物、お取りしましょうか?」
「無口なお嬢さんですねv」

口々に何か言いながら、寄ってくる。
女らしい言葉遣いなど自信がない為、なるべく話さないようにしていたら・・・・・
いつのまにか、取り囲まれて逃げられなくなってしまった。

『なんなんだ、こいつら・・・?』

何で自分に寄って来るんだ?
エドは首を傾げた。
他にも女はいっぱい居る。
何とかバレないで会場に入れたとはいえ、男の女装だ。
本物の女の中では、違和感ありまくりに違いない。
なのに、こんなに寄って来ると言うのは・・・

『ハッ、もしやバレたのか???』

本気でそう思っているエドは、不安げに金の瞳を揺らして、男達を見上げる。
・・・・・自覚がないだけに、質が悪いことこの上ない。

そんな瞳で見つめられた男達は・・・
ある者は頬を染め、ある者をうっとりと見つめ返す。
異様な雰囲気に、エドはますます不安を募らせた。

『とにかく・・・騒ぎになる前に、コレクション部屋に移動して、文献を少しでも探さないと・・・』

そうは思ってはみるものの、どうやってこの囲みを突破すればいいのだろう?
エドは頭を抱えた。
早くしないと、探す時間がなくなってしまう。
おまけに、こんな状況がこれ以上続けば、何より自分がぶち切れそうだ・・・
そんな風に考えていた時、ふいに声がかかる。

「人だかりが出来ているので覗いてみれば・・・これは、可憐なお嬢さんだ」

声の方へ顔を上げたエドは 『げっ』 と声を出しそうなところを、すんでで飲み込んだ。
そこに居たのは、いつもの軍服ではなくタキシードだったけれども、間違いなくよく見知った顔。

黒髪に、漆黒の瞳。
それなのに・・・立っているだけで華のある男。

『焔の錬金術師』 ロイ・マスタング大佐がそこにいた。

『シンデレラの夜・3』



短っ!!・・・・・しかも、大佐もう出ちゃったよ!
これで、シンデレラ物語から離れそうだ・・・(-_-;)
でも、所詮ロイエド女だから・・・・仕方ない(苦笑)



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