ロイエド一年間・・・・『7月・・・ふとあることに気づく・1』



ふと、気が付いたことがある


『・・・確かめてなかったけど、アイツ・・・・・結局、本気なのか??』

だって、この前まで『男』と思われていたわけで。
つまりは、全くの恋愛対象外。
アイツも俺に、そういった好意は欠片も持っていなかったはずなのだ。


それなのに、女と分かった途端、この猛アタック。


『この前まで同性と思って接してきた相手を、こんな急に異性として意識できるものだろうか?』

例えば・・・ウィンリィが実は男だったとする。(あんな乳がでかい男が居るわけも無いが・笑)
それを突然『実は男』などと告白されても、今まで同性だと思ってきた彼女を異性として愛せるか
と言われれば・・・・・・・オレには出来ない気がする。
異性だったと告げられても、俺の中のウィンリィのポジションは『友達』のままだろう。
大佐と俺とは別に友達って訳じゃないから、微妙に違うかもしれないけれど・・・・・・
でも、こんなに急に恋になど落ちるとは思えない。

だから最初は、『タラシだから、とりあえず口説いてみた』のだと思った。
まぁ、毛色の変わったのを、お試し・・・・・みたいなノリで。
なのに、毎月会うことを約束させられ、その度に恥ずかしくて爆発しそうな口説き文句を寄越される。
それさえも面白半分とおもっていたのだが・・・・・・・
この頃、その眼差しに何か真剣なものを感じて戸惑ってしまう。

例えば、オレが女として見て、すっげー魅力的だった・・・とかなら、
アイツがすぐ落ちるのも仕方ないと、納得できないでもない。

だけど・・・・・とても、そうは思えない。

『男』としてのオレは、結構いい線いってるんじゃないかと思う。(・・・身長以外、だけど)

強いし、頭いいし、女の人にはなるべく優しくするようにしてるし、
なんと言っても国家錬金術師。この年にしては、破格の甲斐性だ。
・・・実際、結構女にはもてたりしている。

だが、『女』として見てみると・・・・・・

自分で言うのもなんだけど・・・・・がさつだし、色気なんて無いし、男に優しくないし、
なんといっても機械鎧。接合部分の傷の醜さの他にも、あっちこっち傷だらけだ。

別に脱いで見せたわけではないが、そんなことは容易に想像できるはずだろう?
女性としての魅力など、どう考えても皆無なのだ。

アイツが俺と付き合うことでメリットがある・・・ってのなら、話は別だが。

財力?・・・・・アイツの方が、金持ってる。
錬金術師としての価値?・・・・・アイツだって国家資格を有するほどの錬金術師だ。
自分の手駒として欲しい?・・・・・もう既にその立場だ。
手近に女がいなかった?・・・・・アイツにはいつも掃いて捨てるほど寄って来てる。

・・・・・どうにも、メリットが思いつかない。

おまけに、この前の模擬戦闘以来、『マスタング大佐は、実はショタコンのホモ』などと、
軍部内で陰口を叩かれている。(まぁ、あの場合そう思われても仕方ないだろう)

『メリットどころか、デメリットだ・・・・・』

こんないいとこ無しなのに、なんだってあんなに躍起になって口説いてくるのか・・・・・
エドは頭を抱えて唸った。

「分からん・・・・・・・・」

分からないことがある場合は・・・・・・・。
エドは、すっくと立ち上がった。



******



「と、いう訳で聞きにきた」

分からないことを、分からないままにしておくのは気持ちが悪い。
だったら、聞いてみればいい・・・・・・本人に。

「でさ、どうなの?マジ?遊び?」
「「・・・・・・・」」

少々呆れたようなハボックと
さすがに疲れたような表情をしたロイは、即答せずに黙り込んだ。

それを見て、アルフォンスは深くため息をついたのだった。



今朝、東方に着いてまず宿をとった。
宿のベットに寝転がりながら、恒例のようになった『行きたくない〜〜〜〜〜〜』を繰り返し、
ここに来るのを身もだえしながら葛藤していた姉が、なんだか急に静かになった。
それに気付いて顔色を窺ってみると・・・・・なんだか真剣に考え込んでいるようだった。
しばらくして、頭を抱えてうんうん唸り、姉は一言呟いた。

「分からん」

さすがに声をかけようか?そう思い近づくと、姉はおもむろに立ち上がる。
それに面食らっていると、姉はコートを羽織って自分を見上げた。

「司令部に行くぞ」

そう言ったかと思うと、さっさとドアを開けて出て行ってしまった。
慌ててアルも部屋の鍵を閉めて後を追う。
そのまま司令部にたどり着いた姉は、まっすぐに執務室を目指し・・・・・
いつも通りにノックもせずに入室すると、部屋に居た2人、ロイとハボックに挨拶もせずに、
開口一番に言ったのが『聞きたいことがある』だった。

何事かと息を詰める三人の前で、エドは自分の考えていたことを一気に説明して、先ほどの爆弾発言。
・・・・・そして、今に到る。


『直球過ぎるよ、兄さん・・・・・・(ため息)』

普通、こういう疑問を相手にぶつける時は、2人きりの時を選ぶものではないだろうか?
それも、こんな偉そうな態度ではなく・・・・もっとこう、はにかみながら・・・・

『あの・・・大佐・・・・・』
『ん?なんだい・・・・?』
『・・・・・ごめん、やっぱり・・・いい』
『言ってくれないとわからないよ?・・・・・言ってごらん、エドワード』
『・・・うん。あの・・・・・大佐。オレの事・・・本当に好きなの?』
『エドワード・・・・・(悲しげな表情)』
『だ、だってさ、オレと大佐は年も離れてるし・・・・・しかもオレ、女っぽくないし』
『君は充分に可愛いよ?』
『そんなことない。オレ、がさつだし、優しくないし・・・この体だって機械鎧で・・・・・』
『そんなことで、私の君への愛が揺らぐとでも?』
『え・・・・・じゃあ・・・・本気・・・・なの?』
『もちろんだとも・・・・・好きだよ、エドワード・・・・』
『・・・・大佐・・・・・・・』

と、まぁ・・・・・こんな感じに。(笑)


『兄さんにロマンチックな展開を夢見ちゃいけないんだろうけど・・・・・・』

ああ、容姿は十二分に可愛いのに!!
何で、こんなに色気の無い兄・・・いや、姉になってしまったんだろう?!

『育て方、間違っちゃったかなぁ?』

自分が育てたわけでもないけれど、姉の男らしさの半分は自分の責任な気がして、アルは涙する。
が、当の本人は弟の気持ちなど気付くことなく、なかなか返事が返ってこないのに焦れて、
同じ質問を繰り返していた。


「なぁ、どっち?!」



『ふとある事に気づく・1』・・・2に続く


エド子はどうにも『女の自分』に、自信が持ててないようです。
だって、今まで女として生きてきたことないんだから(笑)
ロイは今回も甘く口説けるか?!・・・・・ちょっとプレッシャー・・・・・


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