ロイエド一年間・・・・『9月・・・アルフォンスに気づかれたかも・2』



思いがけないアルの告白に、ロイは少し呆然として―――
そして、微笑んだ。

「それは・・・・・・・嬉しいね」
「まぁ、まだ本人自覚ないと思いますけどね」

あの姉さんに自覚させるのって、結構骨だと思いますよ?
大変なのはきっとここからですね。
苦笑しながらそう言うアルに、ロイは『そうかもな』と笑った。

そして、笑いを収めた後、真剣な表情になり。

「この機会に、正式に君にも申し込ませてもらう。
――――私は真剣にエドワードと交際したいと思っている、許してもらえるだろうか?」
「・・・・・大切にしてくださいますか?」
「もちろん!」
「それなら、お願いします」

かしゃんと音を立てて、深く頭を下げたアルに、ロイは頷いた。
そして表情を緩ませる。

「君に了承してもらえて嬉しいよ。しかし・・・・・なんだか、意外だったな」
「意外、ですか??」
「彼女に思いを寄せてる輩は私だけではない。だが、そんなものに遅れをとるつもりはなかった。
私は『一番のライバル』になるのは君なんじゃないかと、そう踏んでいたんだがね?」
「は?・・・・・だって、僕・・・弟じゃないですか?」
「だが、彼女の中では君は『最優先事項』だからね。
他の者たちを蹴散らしても、君の一言で行く末が決定しそうだと思っていたんだよ。
君も彼女をこの上なく大切にしているし。正直、了承してくれないんじゃないかと思っていたんだ」

そう言って肩を竦めるロイに、アルは苦笑して見せた。

「そうですね・・・・・・一年前なら、そうだったかもしれません」

大切な姉を守ろうと躍起になっていた。
どの人物だろうと、姉に近づく者は排除しようとしたかもしれない・・・・・
そう言うアルに、ロイは眉を寄せた。

「一年前?」
「姉にとって僕が全てなように、僕にとっても姉が全てだった―――
だって、僕達には他に何もなかったんですから」
「・・・・・・」
「姉を一番理解し、彼女を守ってやれるのは自分だけだと・・・・そんな風に思っていたんです。
母さんとの約束だったし」
「母君との?」
「ええ」

まだ母が生きていた頃。
病に伏したベットの上で、僕と2人きりになった時を見計らって母は言った。
『エドを守ってあげてちょうだい』と。




「・・・・・ね、アル。エドを守ってあげてちょうだいね?」
「え?だって・・・・・姉さん、あんなに強いよ?」
「そうね、強いわね。でも、同時に弱いのよ。」
「・・・・・よくわからないよ?」
「エドは責任感が強すぎて・・・・・なんでも一人で頑張ってしまうでしょ?
いつか疲れてしまうんじゃないかと、立ち上がれなくなるくらい頑張りすぎてしまうんじゃないかと、
母さん、心配なのよ。」
「うん・・・・・姉さんは、頑張りすぎるよね」
「それにあんなに腕白になっちゃったけど・・・・・女の子なの。弱い所もあるわ。
アルは一つ下の弟だけど、男の子でしょう?・・・・守ってあげてくれないかしら?」

母さんに頼りにされていると分かって、嬉しかった。
姉さんの事ももちろん大好きだし・・・・・そうだ、この家に居る男は僕だけなんだ!
僕が守ってあげなくちゃ!
―――そう思い至り、力を込めて母に誓った。

「うん、僕が姉さんを守るよ!・・・もちろん、母さんも!!」
「あら・・・・・ふふ、嬉しいわ。ありがとう、頼りにしてるわね。アル」
「うん!!」


二人で、姉に内緒の指切りをした。
母が亡くなったのは、それから数日後の事だった――――




「ですから、凄い気合はいってたんですよ。母との最後の約束だったし。
・・・・・でもね、一年位前に気付いたんです。僕じゃ守りきれないって」
「君じゃ駄目な部分・・・・・か」
「ええ。姉は―――――僕の前では、いつでも『姉』であろうとする。
元の姿だったとしても、僕はもう背も腕力も、姉を追い越しているはずです。
ましてや、今は疲れも知らない鉄の体。どう考えても僕の方が強いはずなのに・・・・・
それでも、姉にとっては僕はいつまでも、守るべき『弟』のままなんです」

弱い所を見せて心配などさせないようにと、辛い事があっても笑ってみせる。
いつも、僕を安心させようと気を配る。
そんな姉を見るのが、辛い――――
そうアルは言った。

「・・・・・・・なるほど」

やっとアルの言いたいことが分かって、ロイは深く頷いた。

「それに・・・・・姉が、その・・・・・身体的に女性になってから、やはり男女の違いって言うか、
弟じゃ踏み込めないところもあるって気付いて―――」

それなら、信頼できる人が現われて・・・・・・姉が心から甘えられる人が見つかったら。
そして、その人と双方の気持ちが向かい合ったのなら・・・・・
少し寂しいけれど、応援してやろうと心に決めたのだ。

「もちろん、あの天然ボケの姉ですからね・・・・・変な人には騙されないように見張ってましたよ?
それだって、姉を守る・・・・・ってことになりますよね?」
「ああ、そうだよ。私としては守ってくれていて、大感謝だ。
そして―――――君の眼鏡に適って嬉しいよ」
「でも、これからだって姉を泣かすようなことがあれば、即刻敵に回らせてもらいますからね?」
「肝に銘じておくよ」

そう言って苦笑すると、アルも笑って・・・・・・そして、ふっと力を抜いたようだった。

「ああ、なんだか肩の荷が少し下りたって言うか、すっきりしたな〜」
「君も・・・・・・色々と心労が重なるね」
「そうなんですよ!!何てったって、あの姉のお守りは大変なんですよ?」
「だろうね(笑)」
「姉さんって、どこか無防備だから・・・・・しかも、結構世話焼きな所もあるし。
どっかの、顔はいいけどだらしない男なんかにしつこく迫られて、そのうちほだされちゃったら?!
とか、気が気じゃありませんでした」
「・・・・・・・・・・・・・・それは、嫌味じゃないだろうね?」
「は?」
「いや、なんでも」
「??・・・・・・でも、大佐で良かったです。候補だったし」

アルが漏らした単語に、ロイはピクッと反応する。
『なんだ?今の言葉は・・・・・・?』
ロイは顔を顰めつつ、疑問を口にした。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・候補?」
「はいv姉さん、今はまだ子供ですけど・・・・絶対将来いい女になると思うんです!!
それなのに、あんまり恋愛に疎いし、損得勘定とかないでしょう?
だから、僕がお婿さん候補として有望な人を見つけておいてあげようと思って」

姉の好みを踏まえて選んでますから、僕が後押ししてあげればくっつく確率は大きいと思うんですよv
―――そう、無邪気な口調で言うアルフォンスに、ロイは顔を引き攣らせた。

「ちなみに・・・・・・候補は、後何人くらいいるのかね」
「そうですね・・・・今のところ、ざっと10人ほど」
「10人?!」
「その中でも、特に有望な人が3人いて・・・・あなたはその一人だったんですよ♪」
「・・・・・他の候補の名前を聞いてもいいだろうか?」
「えっと・・・3強はあなたと、ラッセル・トリンガムと・・・・・」
「トリンガム?・・・以前鋼のの報告書にあった?」
「はい。彼は一つ年下ですけど・・・彼の錬金術には姉さん一目を置いているんです。
あの姉さんが認める人って数少ないですし、今は子供ですけど将来かなリ有望だと思うんですよね♪
年も釣り合うし。」
「・・・・・もう一人は?」
「ギルバート・プライスっていう人なんですけど・・・・・ご存知ですか?」

アルが口にした名前にロイは目を瞠る。
プライス。プライス・・・伯爵。
セントラルにいる、有名な貴族の名前だ。
豊富な財力を持ち、軍とも繋がりがある権力者だ。
伯爵自身は初老の男だが。確か、「ギルバート」というのは・・・・

「プライス?!・・・・・もしや、レックス・プライス卿のご子息か?」
「はいv以前卿のコレクションを拝見しにお邪魔した時、姉さん、卿にもご子息にも気に入られて。
あの様子じゃ、女だって知ったら絶対落ちますね♪」
「・・・・・・・・」
「後は南方の商人の息子に、北方の錬金術師、西方の起業家。
あと軍人も何人か・・・・・・・・・・・まぁ、どの人もあなたの敵じゃないですよ」

にこにこと(いや、表情はないが)語る弟に、ロイは少し―――――薄ら寒くなった。

「では、僕これで失礼します。姉さんをよろしくお願いします」
「もちろんだともっ・・・!!・・・・・・必ず落としてみせるよ(力説)」
「頑張って下さいv」

今までの余裕は何処へやら。
ロイの態度に力が篭るのを見ながら、アルはニッコリともう一度笑った。
だが、ふと考えるような仕草で、もう一度口を開く。

「あ・・・・・でも、無理に自覚させて泣かせたりしないでくださいね?
ああ見えて、繊細な所もある(かもしれない)ので、優しくしてやってください」

そう心配そうにロイを見詰めつつ、しっかりと釘を挿す。

「まかせたまえ、無理強いなどしないよ。・・・この上なく優しく・大切にするから」

ロイがしっかりと了承するのを確認すると、『お願いします』ともう一度念を押し
そして、アルフォンスはまた丁寧にお辞儀をすると、退室したのだった。



『アルフォンスに気付かれたかも・2』・・・続く


エド子の方のアルは、チョット黒めで(笑)
でも、姉と一緒で天然っぽいとこもあるような?
・・・・・・どっちなんですかね?私にもわかりません(オイ)
『シンデレラ』のオリキャラ、使いまわし(笑)
でも、「シンデレラ」とは関係有りませんからね〜!
こっちはこっちで、フツーに知り合って、フツーに仲良しになったらしいです(笑)
・・・もう、チョットだけ続きます。


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