ロイエド一年間・・・・『10月・・・風がいたずらを仕掛けてきた・1』



その日は晴天で、暑くも無く寒くもなく過ごしやすい―――――そして、時折強い風が吹く日だった。



「エド!!エドじゃない?!」
「ウィンリィ?!何でこんなとこに?」

セントラルのオープンカフェのテラスで。
遅い朝食を食べていたら、突然吹いた強い風に椅子にかけていた赤いコートが飛ばされて、路上に落ちてしまった。
それを立ち上がって拾い上げ、再び席に戻った時。
走り寄る足音と共にかけられた声に、振り向いてギョッとした。
目の前に立っているのは幼馴染の少女。こんな所にはいるはずもない彼女である。
何でこんな所にいるのかと訪ねる前に、ぎゅっと抱きしめられた。

「こんな所でアンタに会えるなんて思わなかった、久しぶり〜vvv」

嬉しそうに抱きしめてくれるのはいい。
だがエドは座ったままの為、抱きしめられた頭があるのは、豊か過ぎる彼女の胸の谷間の間で。
男の振りはしていても、実は女なエドなのでそれ自体は別にかまわないのだが――――

『い、息ができない・・・・・・死ぬ!!』

豊か過ぎる胸は、凶器にもなりうるのを遠くなりそうな意識の中で知ったエドだった。



******



「しっかし、こんなとこで会うなんてな?腐れ縁ってやつ?」
「何よ、その言い方!!もっと喜びなさいよ!」
「・・・・・会った早々、殺されそうだったけどな・・・・・」
「大げさよ!!・・・・・もしそうだとしても、あたしの胸で窒息死なんて、こんな幸せな死に方ないわよ?」
「・・・オレが男だったらそうかもしんねーけどな。ま、いいや」

大体、この幼馴染に口で適うわけがないと、エドはさっさとその話は切り上げた。

「しかし、びっくりしたよなー」
「ほんとだよね。でも、会えて嬉しいや。ウィンリィ、アリス、フローラ」

先ほどは薬店に買い物にいっていていなかったアルも、幼馴染達に会えて嬉しそうだ。
黒髪のアリスと、栗色の髪のフローラも、嬉しそうに頷いている。
先ほどはウィンリィ(の胸)の影になっていて見えなかったが、幼馴染は3人連れだったのだ。
年はそれぞれ違うが、アリスとフローラもリゼンブールの幼馴染なのである。

「で、何でこんなとこにいるわけ?」
「三人でショッピングに来たのよ」
「ショッピング?」
「リゼンブールじゃ、なかなか流行りの洋服とか買えないでしょ?
だから、たまに三人で隣町まで買い物に出てたんだけど、もっと大きな町で買い物したいなぁって思ってたの」
「そうそう、やっぱり都会は品揃えが違うしね♪」
「丁度うちの叔父さんがセントラルに引っ越してて『おいで』って誘われてたから、ウィンリィとフローラも誘ったって訳」

三人娘は、きゃあきゃあと楽しそうに事の次第を口々に説明する。
まさに『かしましい』それを一通り聞き終えて、エドは感心したように頷いた。

「なるほど・・・しかし、よく服ごときでセントラルくんだりまで来る気になるよなー?かなり時間かかったろ?」

女って大変だなー?な、アル?
少し呆れを含んだように弟に同意を求めるエドに、三人は顔を見合わせた。
『本来なら、あんたもこっち側にいるべきなのよ!?』全員の胸中にはそんな言葉が浮かぶ。

「ま、折角来たんだし楽しんでいけよ。オレは、忙しいから行くぜ?」

そう言って立ち上がるエドに、ウィンリィが声をかける。

「あんた、これから軍部にでも呼ばれてるの?」
「いや。今回は軍の徴収じゃなくて、図書館に用事があるんだ」

新刊が入ったんでな。あと古書店めぐりして資料集めだ。
そう言って、エドは椅子にかけてあったコートを着て、手袋を嵌めた。
そんな彼女を見て、三人は顔を見合わせて頷く。

「じゃ、またな――――って、うわっ、なんだよ?!」

最後に挨拶をと顔を上げた途端、急に立ち上がったアリスとフローラに両腕をとられる。
ウィンリィも立ち上がって、呆然とするアルの正面に回った。

「アル、しばらくエド借りても大丈夫?」
「あ・・・・・うん。今日中に返してもらえるなら」
「OK!じゃ、行きましょうか?」
「なんのつもりだよ、お前ら!!行くって、どこに行くんだよ?!」
「もちろんショッピングに決まってんじゃない?」
「オレを荷物持ちにするつもりか?・・・・・なら、アルの方が力があるから・・・・・」

アルを連れてったら?そう言おうとしたが、金髪の幼馴染に睨まれた。
ウィンリィは、びしっとエドを指差して言い切る。

「だぁれが、荷物持ちにするっていったのよ!!買うのよ、あんたも!!」
「は・・・・・何を?」
「服に決まってんでしょ?!女物の!!」
「なっ!?そんなもん必要ねぇ!!」
「問答無用!!行くわよ!アリス、フローラ!!」
「「ラジャ〜♪」」
「は〜〜〜〜な〜〜〜〜〜せ〜〜〜〜〜!!」

両腕をがっしり取られ、更にウィンリィに背中を押されて、
(ちなみに、三人ともエドより身長が高い・笑)
通りがかったおっさんに『よう、兄ちゃん!両手・後に花で羨ましいねぇ!』などと、野次を飛ばされつつ、
エドは連れて行かれてしまった。

呆然とそれを見送ったアルは、
「えっと・・・・・とりあえず、僕は図書館にいこう・・・・・・かなぁ?」
そう呟いて、姉の食い散らかしたテーブルを片付け始めたのだった。



『風がいたずらを仕掛けてきた・1』・・・おわり


幼馴染登場。
さらに2人、幼馴染捏造(笑)
・・・冒頭の窒息しそうなエドは、私の実経験です。(マジ、死ぬかと思った・・・・・)


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